これで日本の政治が刑事司法制度の抜本的な改革に動けば、多くの弁護士たちは、ゴーン氏に拍手喝采を送るだろう。僕も、今回の件をきっかけに日本の刑事司法制度の問題点が改まることを望んでいる。僕は8年間政治家をやってきたが、この領域には何の改革も実行できなかった。それがゴーン氏の行動によって前に動くならば、その点についてはゴーン氏に感謝するところである。
ただし日本の刑事司法制度を真っ向から否定し、日本の主権の行使を阻止したゴーン氏に対しては、日本国民として黙ってはいられない。
戦争とは、国と国が、相手国の主権の行使を否定する戦いだ。それをゴーン氏は個人で、日本の主権が自分に及ぶことを阻止したのであり、まさにゴーン氏と日本との戦争だ。
その上で、緒戦はゴーン氏の勝利。日本国の敗北。
(略)
もし僕がスパイ容疑で中国当局に拘束されたらどうするか
ただ、次のようなことも考えた。もし僕が中国を旅行中に、中国当局に身に覚えのないことで拘束されたらということを。自分では全く納得いかない、スパイ容疑で。弁護士も十分につかず、家族との面会も許されない。よく分からない法律で一方的に裁判が進んで行く。日本政府に助けを求めても全く効果がない。
このまま裁判にかけられれば、長期間の刑務所行きになると言われている。
そして中国の報道では、身に覚えのないことがどんどん報じられている。裁判は二審制で、判決には中国政府の意向が強く働くことがわかっている。
そんなとき僕だったらどうするか。こんな中国から一刻も早く逃げ出したくなるだろう。
でも僕には逃げ出す力がない。力がなければ、そのまま中国の制度に従わざるを得ない。
では逃げ出す力があったらどうするか? あの中国政府相手に、普通は一個人が勝てるわけがないが、もし勝てるなら中国を脱する勝負をすると思う。
ゴーン氏は、日本において今回、まさにそれをやってのけたのだ。