体罰は国が禁止すべきなのか。カナダの研究者たちは2018年、「体罰を禁止している国は、若者の暴力数が少ない」という調査結果を発表した。しかも、国が裕福かどうかは暴力の多寡と関係がないという。どういうことか。ハンガリーのセンメルワイス大学で医師を目指す吉田いづみさんが解説する――。
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世界88カ国で若者の暴力を調査した

カナダ・モントリオールの研究者たちが2018年、英国の医学雑誌「BMJ Open」に「88カ国の調査を踏まえた体罰禁止と若者の暴力の関係(Corporal punishment bans and physical fighting in adolescents: an ecological study of 88 countries)」という論文を発表しました。「体罰を禁止している国は若者の暴力数が少ない」という調査結果を記したものです。

この調査は、経済的に所得の低い国から高い国まで、全88カ国の8545校、約40万人の若者(11歳から25歳まで)を対象に実施しました。国によって調査の仕方や対象年齢は違ったものの、基本的な質問は「過去12カ月間のうち、何回暴力を振るったことがありますか」というものでした。調査後、年齢のばらつきは標準化されています。また、体罰に関しては各国の法律によって禁止されているかどうかが基準となっています。

研究は、WHOが11歳、13歳、15歳を対象に4年ごとに実施しているアンケート(the WHO Health Behaviour in School‐aged Children(HBSC))の34カ国分と、WHOが低・中所得の国の13~17歳を対象に実施しているアンケート(the Global School‐based Health Survey(GSHS))の55カ国分のデータを使って行われました。ニュージーランドと南アフリカでは独自のアンケートを使用していますが、質問内容は他と同様に「過去6カ月または12カ月間のうち、何回暴力を振るったことがありますか」というものです。