裕福な国ほど暴力が少ないわけではない

ドイツやスペイン、ノルウェーなど、欧州の多くの国を含む30カ国は、「体罰を学校でも家庭でも全面禁止」しています。これらの国では、「全く禁止していない」国に比べて男性の暴力は69%、女性は42%低い結果となりました。

またアメリカやイギリス、カナダをはじめとする「学校での体罰は禁止されているが家庭では禁じられていない」38カ国では、「全く禁止されていない」国に比べて男性は大差なかったものの、女性は56%も低い結果となりました。

2015年に同じ研究者たちが発表した論文(Structural Determinants of Youth Bullying and Fighting in 79 Countries)には、「国の裕福度と若者の暴力は直接的に関係しており、経済的に豊かでない国も教育費を増やすことにより、若者の暴力が減らせるのではないか」と書かれています。そのため、調査前は裕福な国ほど暴力は少ないと予想されましたが、今回の調査結果は、その予想と反するものでした。

全ての国の中で特に男性の暴力が少なかったのが、裕福とは言えないカンボジア(1位)、ミャンマー(2位)、マラウイ(3位)、タジキスタン(4位)、コスタリカ(5位)だったのです。また女性ではコスタリカ(1位)、タジキスタン(2位)、中国(3位)で、頻繁に暴力を振るう人が1%以下という結果になりました。

親から子供への暴力も減っている

一方、男女共に圧倒的に暴力が多かったのはサモアで、男性35%、女性27%という結果でした。また、男女の差は明らかで、ザンビアとガーナ以外の国では、男性の暴力は女性に比べて大幅に多い結果となりました。

断片的ではありますが、国によって家庭や学校で暴力が禁止されていると、男女ともに若者の暴力は少なくなることがわかりました。

また、調査の最後には、一昔前は親や教師を含む大人たちから子供への暴力が多かったものの、現在では政府の介入や新しい法律によって改善されていると書かれていました。アメリカで行われた身体的・性的・心理的虐待、ネグレクトの報告件数を見ると、1990年代では1000人中13人の子供が虐待を受けていたのに対し、2017年には1000人中9人まで減少しています。また、カナダや北欧でも同様の報告がありました。