ポジティブ度が高い人は高年収が多い!?

それにしても「よい人生」の実現とは何とも抽象的で漠としたものではないかと思われる節もあるかもしれない。しかし、ポジティブ心理学は科学的実証に基づくことを主たる特長とし、いずれの研究対象も測定可能かつ介入可能な検討項目として具体化されるに至る。逆に言えば、科学的検証に耐えうるかどうかでポジティブ心理学とその他の心理学との線引きが成されている。また、ポジティブ心理学のもう一つの特長に、基礎研究と応用とが連動しているという事実がある。現場での実践導入の成果は統計的データとして解析され、さらなる研究の進展に活かされるという相互フィードバックを続けながら学問領域の発展を支えている。

私たちが「自分の人生はよい人生だ」と実感するときの心の状態とはどのようなものだろうか。米ノースカロライナ大学のB・フレデリクソン博士は「ポジティブ感情」という感情の役割に注目した。ポジティブな感情には多種多様あり、楽しみ事に伴う高揚感や喜びもあれば、満足感や充実感から来る心の静穏もある。興味関心や好奇心などもポジティブな感情だし、愛情や感謝もそうだ。同博士の研究が画期的なのは、ポジティブ感情には人間の注意力、認識力、行動力の幅を拡げる効果があるのに加え、身体的、知的、社会的資源を形成する力があるという「拡張-形成理論」を導いたことである。

ここで、ポジティブ感情が年収などの社会的資源、寿命に代表される身体的資源を形成する力があることを証明した2つの調査結果を紹介する。