図2はイリノイ大学のE・ディーナー博士がある大学の卒業生を対象に行った調査から、大学入学時の性格のポジティブ度(ポジティブ感情を示す度合いを測定したもの)と、卒業して19年後の収入との関係を示したグラフだが、最もポジティブ度の高かった学生たちとそうでなかった学生たちとの間に平均年収にして1万5000ドルの開きが出たことが判明した。
また図3は「尼さん研究」として有名なものだが、修道院という閉鎖的な場所に暮らし、生活環境が同じであることから研究対象として好都合な尼僧たちを調査した結果、最もポジティブ度の高かった尼僧たちと最も低かった尼僧たちとでは生存率に大きな開きが見られることがわかった。
ポジティブ感情を高めることが個人のみならず組織のパフォーマンス向上にも有益であることを示したのは、心理学者で企業コンサルタントでもあるM・ロサダ博士だ。ロサダ博士はフレデリクソン博士のポジティブ感情の研究に基づき、企業を対象に一歩踏み込んだ研究をしてある発見に至った。
ロサダ博士の研究チームは、60のマネジメントチームがそれぞれ年間の経営目標や戦略を組み立てる様子を会議室のマジックミラー越しに観察し、各チームがどのような言葉を用いて議論したかに注目して(1)ポジティブかネガティブか(励ましなど協力的で前向きな言葉が聞かれたか、または皮肉や嫌味などの後ろ向きの言葉が聞かれたか)、(2)自分向きか他人向きか(目の前の発言者やグループに言及したか、またはその場に不在で自社にも関係のない人物やグループに言及したか)、(3)探求か弁護か(状況改善に向けて質問を行ったか、または発言者自身に偏る議論に終始したか)、という3つのチェックポイントから分析した。