誰も私のことは知らない

【鈴木】最初はみなさんのお宅を訪問しても、「そういう商品は要りません」と言われました。派遣で夕張に2年2カ月いたとはいえ、誰も私のことは知らない。どこかの営業が来たと思われたみたいです(笑)。それでも地道に、自分がなぜ裸一つで夕張に帰ってきたのかを伝えていたら、少しずつ応援してくださる方が増えました。「商売上の都合で表立って言えないけど、応援してるから」という方が多かったですね。

【田原】その結果、当選して全国最年少市長が誕生する。勝因は何ですか。

【鈴木】私なりに振り返ると、思い当たることがあります。まず、主な候補者の中で夕張で暮らしたことがあるのは私だけだったこと。もう1つは、「夕張を何年で再生するか」という質問に対する答えです。公開討論会で議論になったのですが、ほかの候補者は「5年」とか「1、2年」と回答。一方、私は「夕張の問題は簡単じゃないから、この場で何年とは言えません。根拠なく短い期間をいうのは無責任だ」と答えました。それまで夕張の人たちは、その場しのぎでいいことを言う政治に振り回されてきたので、正直にお話ししたことが共感を得たのかもしれません。

【田原】ただ、市長になれば再生に取り組まないといけない。鈴木さんは具体的に何をやったのですか?

【鈴木】夕張はピークの12万人から7000人台まで人口が減りました。ところが、町の構造が人口10万人のときと同じだった。たとえば浄水場やし尿処理場も昔のままです。単身世帯なのに大家族用の家具を使っているようなもの。これを変えるため、人口規模に合わせて都市機能を集約化するコンパクトシティー化を進めました。施設を統合して集約すれば、お金が安くなるだけでなく、生活の環境も改善していく。そういう投資をしながら借金を返していく計画をつくりました。

【田原】それは画期的だ。いまでも地方自治体は、成長発展の夢を捨てられず、人口は減るに決まってるのに増やすことを考えてる、だから何もできない。

【鈴木】みんなそれはわかっているのですが、増えると言ったほうが選挙で有利。だから人口減少を前提とした政策はタブーになっていました。

【田原】具体的にはどんな政策を?