「10月中の離脱」はジョンソン首相のアピールにすぎない
英国とEU(欧州連合)は10月17日のEU首脳会議(サミット)で、英国のEU離脱に関する新たな協定(新協定)案で合意に達した。昨年11月にテリーザ・メイ前政権がEUと結んだ旧協定案に比べると、懸念となっていた北アイルランド国境問題で双方が一定の歩み寄りを見せたことが新協定案の特徴であった。
しかしながら英議会はかたくなであった。19日に英下院はEU離脱に関する関連法が成立しない限り新協定案の審議を延期する動議を可決したのである。これによってボリス・ジョンソン首相は、9月上旬に成立した離脱延期法に基づき、来年1月31日まで交渉を延期したい旨をEUに対して書簡で申請せざるを得なくなった。
EUのトゥスク大統領によると、ジョンソン首相は未署名で書簡を送付したようだ。同時に首相は、個人的な見解としては今月中の離脱を目指すという書簡も送付した模様である。本気で離脱を目指しているという識者の観測もあるが、筆者個人としては、首相の支持者に対するアピールにすぎないと考えている。
フランスのマクロン大統領は英国による離脱延期要請に対して厳しい立場を採っているが、11月に新執行部に体制が移行するEUとしては、事態の混乱を回避するために10月末までに臨時サミットを開催して、英国の要請を容認する見通しである。結局、離脱交渉は再び延期される可能性が高いと見る。