それでも政府は「撃墜権限を与えない」
これは差し迫った脅威をドラマ仕立てで表現したものである。過日、自衛隊は、爆発物を積載したドローンが駐屯地や母港に襲来したとしても有事でなければ法的にも能力的にも何もできないと防衛省が認めた「自衛隊に敵ドローンを撃ち落とす権限なし」との論考をPRESIDENT誌に掲載した。
論考で指摘した自衛隊による不審ドローンの対処方法の問題点について振り返る。まず、ドローン規制法はドローン撃墜権限を警察官や海上保安官などに与えたが自衛官には捕獲・撃墜権限を与えていない。また、防衛省・自衛隊関連施設では東京・市ヶ谷の防衛省本省以外はドローン飛行の禁止区域に指定していない。また、航空法でも自衛隊施設の一部しかドローンの飛行を禁じていない。たとえ航空法で禁止された場所でドローンを飛ばしたとしても罰金50万円以下が科される程度なのでテロリストに対する抑止力になるとは考えづらい。ちなみに、自衛隊は、自衛隊法に基づく、「武器等の防護のための武器の使用」が許されているが、これは平時には警察官職務執行法が適用されるので、平時に怪しいドローンに対して発砲を許可するようなものではない。
能力的にも、自衛隊の現在の装備では小型のドローンをレーダーで捉えるのは難しい。撃ち落とす訓練もしておらず、専用の装備もないのだ。つまり、今の自衛隊は敵ドローンが基地に攻めてきても110番するしかないという哀れな現状なのだ。
実際、昨年も富士総合火力演習では開始時に「ドローンが飛行した場合は万全を期しますが警笛音を連続で鳴らします」という極めて情けないアナウンスが放送された。これは富士総合火力演習の会場がドローン規制法はもちろん、航空法の適用範囲でもないからだ。他方、陸上自衛隊久留米駐屯地はドローン飛行禁止の「お願い」を久留米市のホームページに載せている。こうして自衛隊は「ドローンに打つ手なし」ということを平時から露呈している。これらは自衛隊に権限も装備もないことを裏打ちしている。
私の論考を引用し、質問主意書が立憲民主党の逢坂誠二衆議院議員から2回提出された。閣議決定で回答された内容は基本的に防衛省の回答と似通っており、自衛隊が平時においてドローンを迎撃できないことが再確認されたが、新たな問題点も露呈させた。