――2018年X月、自衛隊壊滅。
とどまることを知らぬ北朝鮮に対し、海上封鎖をついに決意したトランプ政権。しかし、そのとき、自衛隊は北朝鮮の手によって壊滅していた。
なぜならば、北朝鮮の工作員がヤマダ電機などでも購入できる10万円ほどの小型無人機(ドローン)によって、自衛隊の戦闘機も護衛艦も破壊されていたからである。ウクライナでは世界最大の弾薬庫を吹き飛ばし、シリアでの戦いでも頻繁に使用されている、焼夷手榴弾等の爆発物を積載したドローンでの爆撃によってである。
現代兵器は、その全体が精密部品の塊であるがゆえに意外と脆い。イージス艦もレーダーを破壊されれば、対空ミサイルも対艦ミサイルも誘導できなくなり、単なる鉄の塊でしかない。1機100億円のF-35も同様で、エンジン付近なりコックピット周辺を破壊すれば、修理のためにしばらく無力化できる。燃料が満タンなら大爆発を起こすだろう。滑走路にパチンコ玉を大量にドローンでばらまいてもよい。ジェット戦闘機は滑走路に異物があるまま離陸を試みれば、空気吸入口からエンジンが異物を吸い込み爆発を引き起こすからだ。
燃料車を爆破してもいい。これらは装甲もないので、簡単に炎上し、滑走路を使用不可能に追い込むだろう。航空自衛隊のミサイル弾薬の多くが貯蔵されている愛知県の航空自衛隊高蔵寺分屯基地の弾薬庫も山腹からトラックへと搬出作業中に、大量のドローンから爆撃されれば最低でも大混乱、最悪の場合は大爆発するだろう……。

それでも政府は「撃墜権限を与えない」

これは差し迫った脅威をドラマ仕立てで表現したものである。過日、自衛隊は、爆発物を積載したドローンが駐屯地や母港に襲来したとしても有事でなければ法的にも能力的にも何もできないと防衛省が認めた「自衛隊に敵ドローンを撃ち落とす権限なし」との論考をPRESIDENT誌に掲載した。

写真=iStock.com/PhonlamaiPhoto

論考で指摘した自衛隊による不審ドローンの対処方法の問題点について振り返る。まず、ドローン規制法はドローン撃墜権限を警察官や海上保安官などに与えたが自衛官には捕獲・撃墜権限を与えていない。また、防衛省・自衛隊関連施設では東京・市ヶ谷の防衛省本省以外はドローン飛行の禁止区域に指定していない。また、航空法でも自衛隊施設の一部しかドローンの飛行を禁じていない。たとえ航空法で禁止された場所でドローンを飛ばしたとしても罰金50万円以下が科される程度なのでテロリストに対する抑止力になるとは考えづらい。ちなみに、自衛隊は、自衛隊法に基づく、「武器等の防護のための武器の使用」が許されているが、これは平時には警察官職務執行法が適用されるので、平時に怪しいドローンに対して発砲を許可するようなものではない。

能力的にも、自衛隊の現在の装備では小型のドローンをレーダーで捉えるのは難しい。撃ち落とす訓練もしておらず、専用の装備もないのだ。つまり、今の自衛隊は敵ドローンが基地に攻めてきても110番するしかないという哀れな現状なのだ。

実際、昨年も富士総合火力演習では開始時に「ドローンが飛行した場合は万全を期しますが警笛音を連続で鳴らします」という極めて情けないアナウンスが放送された。これは富士総合火力演習の会場がドローン規制法はもちろん、航空法の適用範囲でもないからだ。他方、陸上自衛隊久留米駐屯地はドローン飛行禁止の「お願い」を久留米市のホームページに載せている。こうして自衛隊は「ドローンに打つ手なし」ということを平時から露呈している。これらは自衛隊に権限も装備もないことを裏打ちしている。

私の論考を引用し、質問主意書が立憲民主党の逢坂誠二衆議院議員から2回提出された。閣議決定で回答された内容は基本的に防衛省の回答と似通っており、自衛隊が平時においてドローンを迎撃できないことが再確認されたが、新たな問題点も露呈させた。