家電量販店が武器庫に? 訓練すらしない自衛隊

いくつかあるが、最も重要なのは抑止力が完全に喪失したことだ。政府は「自衛隊員にドローンの撃墜権限を付与することは考えていない」と明言してしまった。この回答によって、中国や北朝鮮は“ヤマダ電機のドローン”の利用に自信を深めただろう。なお、中国共産党の機関紙「人民日報」系のタブロイド紙「環球時報」は、過去に筆者のドローンの軍事転用に関する記事を無断転載するなど注目している。

中国にはDJIなど、世界シェアを誇る大手ドローン企業が複数存在しており、小型から大型までのドローン大国である。また、北朝鮮も38度線で小型偵察ドローンを複数運用している。日本との有事になれば、彼らは貴重なミサイルや核兵器を使わずともドローンによって自衛隊を無力化できるのだ。何せ、政府は「自衛官にドローン撃墜権限を与えない」と今回の主意書に対し回答してしまったからだ。しかも日本各地のヤマダ電機などの一般店舗が彼らの武器庫になるのだ。

もちろん、政府の判断は立法趣旨上やむをえないものである。またドローン規制法も、制定時当初は市ヶ谷すら対象外だったのが自民党国防族らの反発により、今の状態まで改善されたという経緯はある。しかし、それでも現場の自衛隊幹部からは懸念が相次いでいる。ある幹部は「実際に不審なドローンが基地に飛んできたことがある」と説明する。別の幹部は、現状としては有事が近づいた際、陸上自衛隊は退避壕を掘削してそこに装備を避難させる運用方法になっていることに触れ「ドローンによるゲリラ攻撃がたやすくなった今、こうした方法が有事に際して間に合うはずがない」とも不安視する。

また「そもそもドローンのような小型目標を狙った射撃訓練もほとんどしていないし、武器を保管庫から出している間にすべてが終わってしまう」という声も聞かれた。繰り返しとなるが、日本の自衛隊には撃墜権限も装備もない。ドローンの導入もほとんど進んでいない。お寒い、哀しむべき状況だ。