展示作品は意欲的だが、「年少者への配慮」には問題あり

冒頭で称賛した映像プラグラムに関しても、年少者への配慮という点では問題がある。

欧米では映像の過激さに応じて、視聴可能な年齢をわける「レイティング」が一般的に行われている。たとえば、あいトリで上映された映画『デトロイト』に関して日本では特に制限がついていないが、アメリカでは「R指定」になっており、17歳未満は保護者同伴でなければ鑑賞できない。国際芸術祭である以上、海外でR指定となっている作品については、鑑賞者に何らかの注意喚起をするべきであったろう。

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キャスリン・ビグロー『デトロイト』2017

また、前述の吉開菜央の映像は、作品として秀逸だったが、年少者の鑑賞に関する制限はなかった。会場を訪れた年少者が仮に予備知識のないまま見てしまった場合、大きな衝撃を受けることになる。

地域振興も視野に入った芸術祭である以上、なんとなく会場に来てしまった親子が、安心かつ安全にコンテンツを楽しめるような設定が必要であるのだが、こうした見方は観光学の立場からの苦言なのかもしれない。(続く)

※編集部註:吉開菜央氏の映像作品の展示について、あいちトリエンナーレ実行委員会事務局から以下の説明があったため、追記します。(10月8日12時10分追記)

 年少者の鑑賞には向かないという事前の注意喚起・告知は控えていましたが、映像プログラム会場受付では、おおよそ中学生以下に見受けられるお客様が受付に来られご鑑賞を希望する際は、個別に内容に関してお声がけしていました。その上で、お子様連れでの鑑賞を辞退された方、ご理解いただいた上でお子様と最後まで鑑賞された方、途中で退室された方もいらっしゃいました。なお年少者だけお二人づれのお客様が「Grand Bouquet」鑑賞を希望されたこともありましたが、注意喚起した上で、ご入場いただき、お二人は最後までご覧いただきました。
 事前告知を控えた理由は、本作に関しては様々な経緯がありましたが、その話題だけに不用意に焦点が当てられることは、作品の意図を損ねると考えたためです。代わりの対応として、映像プログラムでは上映ごとに受付をしていたため、個別に、過度になりすぎないように、必要に応じてお客様に注意喚起しておりました。
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