対日依存度の高い韓国企業
韓国経済にとって、マクロとミクロの両面で、わが国との関係はとても大切だ。日韓関係の安定なくして、韓国経済の安定は難しいといっても過言ではない。
マクロ経済面では、1997年のアジア通貨危機、および、2008年のリーマンショックの際、わが国は韓国に資金支援を実施した。日韓関係は韓国の信用力、さらには経済の実力を支える基礎だとする市場参加者や経済の専門家は多い。北朝鮮への対応を考えても、日韓連携は欠かせない。
韓国の企業経営にとっても、わが国との関係は重要だ。
過去、韓国の保守派政権は、サムスン電子をはじめとする大手財閥企業の経営を守ってきた。政府の庇護の下、財閥企業は迅速かつ大規模に設備投資を進めてきた。それが、自動車、液晶テレビ、スマートフォン、半導体などの分野における韓国企業の生産能力の増強と世界市場でのシェア獲得を支えた。
韓国の企業は保守派政権の支援を得つつ、わが国の経営資源(ヒト・モノ・カネ)にアクセスすることで成長を実現した。韓国半導体業界の状況を考えると、まさに、韓国はわが国の経営資源に依存してきたことがわかるだろう。
北朝鮮というカントリーリスクもある
まず、ヒト(人材)に関して、サムスン電子などは日米半導体摩擦の熾烈化を受けて活躍の場を外部に求めたわが国のエンジニアなどを雇い、技術力を吸収した。次に、モノに関しても、韓国はわが国に依存している。韓国の半導体産業は、レジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミドのかなりの部分をわが国から調達している。韓国で必要とされるレジストとフッ化ポリイミドの90%程度がわが国で作られている。そのほか、半導体製造装置などの分野でも、韓国はわが国のモノを必要としている。
さらに、わが国の銀行や政府系金融機関は、韓国企業への融資や債務の保証を提供してきた。それが、北朝鮮というカントリーリスクを抱える韓国の企業および経済全体の資金繰りの安定に役立ってきた。
しかし、左派政治家である文大統領は、対日強硬姿勢を貫いている。わが国が韓国と、冷静に、長期の視点で関係の維持と強化を目指すことは難しくなってしまった。
とくに、7月、安全保障面の不安からわが国が韓国向けの輸出管理制度を見直し、厳格化したことは、韓国企業にとって死活問題と映っただろう。WTOルールでは、安全保障上の不安がある場合、例外的に対象国への輸出管理を見直すことが認められている。軍事転用が可能な資材の輸出にあたっては、各国が国際社会への責任を果たすために、自国の判断で適切に管理しなければならない。