人々の行動は、一朝一夕には変わらない
その一つに、経営風土のちがいがある。ECビジネスの強化を目指すにあたり、ヤフーは前澤氏の経営スタイルになじんできたZOZOの従業員を一つにまとめ、その活力を高めなければならない。ヤフーが、ZOZOで働いてきた人々の感覚や生き方を尊重し、創造力が発揮されるとともに、その実用化を支える体制をていねいに整えていくことが求められる。
その取り組みを進めるにあたって、焦りは禁物だ。人々の行動(生き方)は、一朝一夕には変わらない。一定の行動を強制されると、どうしてもわたしたちは心理的な反発を覚える。ヤフーが短期間での買収の成果実現にこだわり、ZOZOの従業員に自社の考えを強要するようなことがあれば、前澤氏のもとで働いてきた人々の心はヤフーから離れてしまう恐れがある。それは避けなければならない。
そうでなくとも、自らを“ワンマン経営者”と称し、成長を実現してきたカリスマである前澤氏が去ったことにより、ZOZO内部には動揺が広がっている。ヤフーが成長の実現への焦りを抑え、ていねいに組織の調和と安定を目指すことは、買収戦略を成功に導くために欠かせない要素の一つと考える。