本当に考えるべきは、高校と大学の差別化

【鳥飼】もう1つは、東大の石井洋二郎副学長がおっしゃっていましたが、目的と手段を取り違えてはいけない。つまり「英語の4技能の力をつける」という目的があるとして、それを達成するためにはどういう選択肢があるかを考えなければならない。現状では、他の選択肢は考えようともせず、大学入試を変えれば高校の英語教育が成功する、と単純に決めつけています。それは根拠のない思い込みでしょう。

そもそも高校と大学の接続は簡単ではありません。日本高等教育学会の荒井克弘会長によれば、高校と大学とでは使命が違います。小中高は知識や技能の基礎を積み上げていく教育で、大学は専門的な教育と研究を通して新たな「知」を探求する場です。教育制度は各国で異なりますが、米国では、専門教育は大学院であって、学部は大学院への準備として教養教育が中心です。しかし、日本は学部中心になっている。専門性もわからない高校生がいきなり学部の入試を受けて、経済学部か理工学部かなど専門を選ばなければならない。本来であれば、教養教育を受けてから専門教育に進む方が良いでしょう。

センター入試こそ日本が誇れるテスト

【三宅】大学設置基準の大綱化で教養科目が一気に減りましたからね。

【鳥飼】あれは失敗でしたね。で、今度は大学入試で高校と大学をやみくもにつなげようとしている。根本的に間違っているのではないかと思います。

三宅 義和『対談(3)!英語は世界を広げる』(プレジデント社)

【三宅】先生のお話ですと、国が4技能のテストを作ればいいということでもない、ということですね。

【鳥飼】国の方針として絶対に「話す力」を測らないといけないなら、責任をもって大学入試センターでやってくださいという話で、民間試験に丸投げというのは無責任です。でも、大学入試センターは、50万人の「話す力」を公平・公正に測定するなどそもそも無理だと知っているでしょうね。大きなリスクがあるのに「話す力」に固執する理由が分かりません。

「4技能」は総合的に測ることが可能ですし、基本的にいままでのセンター入試は非常に優れた試験でした。センター入試こそ日本が誇っていいテストのあり方かもしれません。その成果を検証もせず廃止してしまうのは、拙速もいいところだと思います。

(構成=郷 和貴)
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