大学入試でスピーキング力を測る必要はない

【三宅】実際にはスピーキングを大学受験に入れるのはなかなか難しいわけですね。

【鳥飼】大学入試選抜で「話す力」を試験する必要はないと思っています。吃音などの障がいがある受験生への配慮は整備されていませんし、公平性や客観性を追求していくとテストの内容も決まりきった会話の定型文だけになってしまいます。

しかし、決まり文句を知っているか知らないかという試験だったら、結局は定型表現の暗記なので、本当のコミュニケーション能力を測っていることにはなりません。中学3年生を対象にした全国学力テストの英語スピーキングテストの内容をみても、そう思いました。それに「話す力」の何を見るのかは大きな問題です。発音なのか、文法なのか、ともかくよどみなく話せば良いのか。

それを考えると、入試では英語の基礎力だけを測る。つまり、高校までは基礎力を確実に身につけることに専念して、話すことに関しては大学に入ってから、文化やコミュニケーション・スタイルの違いを含めて学べばいいと思います。

文法をおろそかにしている現在の日本の英語教育

【三宅】ただ、大学入試で話す力を測るように変わっていかないと、高校の英語教育は変わらないという意見も多くあります。

【鳥飼】よくいわれますよね。特に一般の方と経済界の方はそうおっしゃいます。でも、まずは高校の英語教育をどう変えたいのかを議論してから、そのために何が必要かを考えるべきではないでしょうか。すでに日本の英語教育は会話一辺倒になっていて、文法や読解などの基礎が非常に弱くなってしまっている現状を知っていただきたい。なぜ基礎がおろそかになっているかといえば、「コミュニケーション」と言いながら実態は英会話が中心で、高校の学習指導要領では英語の授業を英語で行うことが基本とされているからです。

【三宅】日本語で説明してさえよくわからないものを英語で説明すると、ますます混乱を極めますよね。イーオンでもキッズの文法クラスは、日本語も使用し成果を上げています。

【鳥飼】はい。文法については日本語で教えるほうがはるかに効率よく理解できます。いまの大学生をみると、英語の基礎ができている学生とできていない学生と二極化していて、どちらが多いかといえば、基礎力なしが多数派です。学校によっては英語だけで教えることの非効率さをわかっているので、文法だけは日本語で教えているところもあるので、そういう学校で英語を学んだ学生の基礎力は高い。一方で、国公私立を問わず、中学校レベルの英文法の補習授業をしている大学があるくらいです。

【三宅】文法がわからないのに会話ができるわけがないですよね。

【鳥飼】そういうことです。しかも2020年からは中学でも英語だけを使った英語の授業が始まるので、日本語でわかりやすく文法を教えてくれる塾に生徒が殺到すると思います。結局、私たち日本人にとっての英語は、アメリカに移住した人が第二言語として習う英語と違い、普段は使わない外国語です。それをなんとか学ぼうとするのであれば、それなりのやり方があってしかるべきで、日本人に向いた指導法や学習法があるはずです。英語漬けにしたらみんなが上手になるかというと少し違う気がします。