「早急に韓国と和解すべきだ」という意見に左右されてはダメ

これは日本にとって大きなチャンスだ。日本は文氏の発言をうまく捉えてさらに韓国を軟化させたい。相手国の意に沿うように動いたとしても、最後は自国の利益を狙うのが外交だ。わが身の肉を切らせて相手の骨を断つような戦術を使うべきである。それができてこそ本物の外交だ。

ただし焦りは禁物だ。「このままでは日本と韓国の対立がどう収まるのか分からない。早急に韓国と和解すべきだ」という意見もあるようだが、ここはじっくりと慎重に韓国の出方を見定めてかかる必要がある。

8月3日付の朝日新聞の社説は「日本と韓国が国交を開いてから半世紀あまり。その歩みの中で両国関係は今、最も厳しく、危うい領域に入りつつある」と書き出す。見出しも「対立する日韓 交流の歩みも壊すのか」である。

どうやら朝日社説は日韓双方に襟を正すよう求めていくようである。

「安倍政権はきのう、輸出手続きを簡略化できるリストから韓国を外すことを閣議決定した」とホワイト国からの韓国の除外に触れ、「自治体や市民団体などの交流行事は中止や延期が相次ぐ。7月の半導体材料の輸出規制もあわせ、今後の運用次第では韓国経済を深刻に苦しめ、日本の産業にも影響がでかねない」と指摘したうえで日本政府に対し、こう要求する。

日本と韓国は振り上げた拳をどの辺りで下ろすのか

「両国関係に決定的な傷痕を残す恐れがある一連の輸出管理を、日本は考え直し、撤回すべきだ」

朝日社説に言われるまでもなく、日本と韓国は振り上げた拳をどの辺りで下ろそうかと真剣に考えているはずある。

韓国政府に対してはこう主張する。

「一方、文在寅政権は対抗策として、安保問題で日本との協定を破棄する検討に入った。だが北朝鮮が軍事挑発を続けるなかで、双方に有益な安保協力を解消するのは賢明な判断とは言えない」
「文大統領は、ここまで事態がこじれた現実と自らの責任を直視しなければならない。きのう『状況悪化の責任は日本政府にある』と語ったが、それは一方的な責任転嫁である」

朝日の主張の通りだ。このまま日韓関係が悪化していけば、喜ぶのは北朝鮮だ。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長はすでに文氏を見下している。金正恩氏が相手にするのは、アメリカのトランプ大統領だけだ。もう韓国大統領の仲立ちなどいらない。金正恩氏はトランプ氏に直接、書簡を送れるし、メールだって出せる。そこを文氏はどこまで理解できているのか。