スタートアップが「小さな市場」を狙うべき理由
一方、ビジネススクールでは通常、大きな市場を狙うことが推奨されています。大きな市場で数パーセントのシェアを得られれば、それだけで大きな売上になることがすぐに分かるからです。
しかしスタートアップが狙うべき市場は、「今はまだ小さくとも急成長する市場」と言われています。なぜスタートアップは小さな市場を狙うべきなのでしょうか。その理由は5つ考えられます。
1つ目に、最初から大きな市場にいる顧客にリーチしようとすると、それに応じたマーケティング費用が必要になるからです。そんな費用はスタートアップにはありません。またリーチしようとしても、どのチャネルが本当に顧客に届く効果的なチャネルなのかどうか、判断が付きません。
2つ目として、そもそもスタートアップが作る先進的な製品に理解を示すような初期の顧客はほんのわずかです。であれば、スタートアップはそうした人たちがいる小さな市場に最初から集中したほうがよいでしょう。
小さな市場ほど大企業が参入しづらい
3つ目として、大きな市場になればなるほど競合が多くなり、差別化が難しくなることがあります。そしてその結果、利益率は激減します。特に価格競争が起こるような領域では、体力の少ないスタートアップが生き延びる可能性は低くなります。
4つ目に、小さな市場ほど大企業が参入しづらいという点が挙げられます。そして、その市場への参入に大企業が躊躇している間に、スタートアップならその市場を独占することができます。
そして最後に、小さな市場であれば素早く独占することが可能です。大きな市場を最初から狙うと、その独占に時間がかかります。だからこそ、まず小さな市場を独占し、そこで利益を稼ぎながら次の市場を狙っていったほうが競争に巻き込まれずに済みます。
こうした背景からも、スタートアップはまず小さな市場を狙うほうが理にかなっている、と言えるのではないでしょうか。現実として、どこを市場に選ぶかが、スタートアップそのものの成否をほぼ決定すると指摘されています。古くからスタートアップへの投資を手がけるIronstone Groupによると、スタートアップの成功要因の約80%が市場の選択による、という分析もあるそうです。