Gmailを作り出したグーグルの「20%ルール」

そしてもう一つ、大企業で急成長するアイデアを守るやり方として試されているのが、承認そのものを極力なくす、といったやり方です。

たとえばグーグルの「20%ルール」は有名です。これは業務時間のうち、20%を好きな活動に使ってよい、という制度です。この制度を使って生まれた製品の例として、Gmailなどが挙げられます。

ソフトウェア会社であるアドビでは「Kickbox」というプログラムを実施しています。このプログラムの参加希望者には、最初にワークショップと1000ドルの資金が与えられます。その資金をどう使うかはその人次第で、何の報告義務もありません。誰でも参加でき、上司の許可を取る必要もありません。彼らはそうして様々な試行錯誤を、承認なしですぐに始めることができます。

もちろん、こうした取り組みが適用できる事業は、ITなどのイニシャルコストが安い分野になるかもしれません。しかしまわりの協力を仰ぐことができれば、多くの取り組みは、意外と小さなコストで賄えてしまうのも事実です。

であれば、最初の承認プロセス自体をなくしてしまって、ある程度の段階に達したとき、継続のための資金を追加投資するかどうかを決めればいい、というのはある意味で合理的な判断と言えそうです。

液晶テレビは「闇研究」から生まれた

過去を振り返ってみると、大企業の一部の革新的な事業は、「スカンクワーク」と呼ばれる自主的活動や、闇研究(闇研)と呼ばれる非公式研究から生まれてきたと言われています。国内の闇研の例として、VHSビデオや液晶テレビなどはよく知られています。

昔に比べ、こうした闇研究が許されなくなったとも聞きますが、そうした仕組みをある種の教育や投資と捉え、社内制度として整えておくのは一つの経営手法なのかもしれません。

さらにいえば、大企業で急成長する事業を作るためには評価システムの見直しも必要となります。

新規事業のほとんどは失敗します。「予想業績を達成したかどうか」という意味では、9割以上が失敗すると言ってよいでしょう。

ただ大企業の評価システムはそうした失敗について非常に厳しい態度をとりがちです。

決められたことを誰よりもうまくやることがこれまでの社会では求められていた能力であり、失敗は単に減点対象でしかないと考えると、これも当然の理屈でした。