大企業は「承認」に関わる人が多すぎる

アイデアの部分では「急成長するよいアイデアは最初悪いように見える」という反直観的なことを解説し、戦略の部分では「小さな市場を独占する」というこれもまた反直観的な条件を解説しました。

でももしこうした条件が正しいのであれば、急成長する新規事業を欲する大企業には非常に難しい判断が求められるでしょう。

なぜなら大企業で何かをするとき、大抵は承認プロセスがあり、その承認に関わる人が多くなればなるほど、悪く見えるアイデアや小さな市場を狙う戦略が承認されない可能性が高まるからです。

ORIGINALS―誰もが「人と違うこと」ができる時代』(アダム・グラント著、シェリル・サンドバーグ解説、楠木建監訳、三笠書房)という本の中で、「オリジナルなアイデアは実際には多い」という指摘がされています。

であれば、そもそもの問題は、企業内にオリジナルなアイデアがないというわけではなく、そうしたアイデアを守る仕組みがない、ということだと言えます。社員にオリジナリティが足りないからといって、講師を招いてアイデアワークショップなどをしても、そこで生まれてきたアイデアを実施できる仕組みがなければ意味はありません。

急成長するアイデアは「理解が難しい」もの

一見悪く見えるアイデアほど、大企業で実践することは難しくなるため、どうやってアイデアを守るか、という視点が必要になります。だからこそ何より「急成長するアイデアは、最初理解が難しいものだ」という事実を経営層やマネージャーが理解する必要があるでしょう。

How Google Works―私たちの働き方とマネジメント』(エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル著、土方奈美訳、日本経済新聞出版社)では、「次なる大きなものは最初おもちゃのように見える」「新しい技術は、個別具体的な問題を解決する手段として、かなり原始的な状態で誕生することが多い」と記されています。

もちろん、その事業が現在求めているアイデアが急成長を果たすようなものではなく、日々の改善であれば、突拍子もないアイデアは不要かもしれません。ただ、急成長するようなアイデアの初期は日々の改善のためのアイデアとは見かけの種類が異なるかもしれない、という認識を承認側が持つことは重要ではないかと思います。