【田原】自動化って、具体的にどうするんですか?

【藤巻】いままでは人間が「このデータのこういう項目に注目すれば、故障がわかるんじゃないか」と勘と経験で試行錯誤しながらモデルをつくっていました。そのパターンを探す部分をAIにやらせて自動化します。

【田原】もっと基本的なことを聞かせてください。AIは、いままでの機械化とどこが違うの?

【藤巻】いままでの機械化は、人がプログラミングをしてルールを書いていました。AIは、そのルール自体を機械にデータからつくらせることができる技術です。

機械自身が学習できるのがAI

【田原】要するに、機械自身が学習できるのがAIだと思うけど、どうして機械が自分で学習できるようになったんだろう?

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。現テレビ東京を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。著書に『起業家のように考える。』ほか。

 

【藤巻】まずデータがたくさん溜まったこと。そして、コンピュータが大量のデータを処理できるレベルまで発展したこと。そして最後に、脳の部分にあたるアルゴリズムが進展したこと。この3つが背景にあります。

【田原】どうして脳の部分が機械でできるようになったんですか?

【藤巻】じつは脳の部分の技術、つまりディープラーニングのモデルは、何十年も前からありました。

【田原】ちょっと待って。ディープラーニングもきちんと説明してほしい。

【藤巻】機械学習にはさまざまな方法がありますが、そのなかの1つで、脳の仕組みを真似したモデルをディープラーニングと言います。

【田原】ディープというのは、深く幾つも幾つも、何重にも考えて判断できるようになったということ?

【藤巻】そうですね。何重にもニューロンが張り巡らされている脳を模したものです。もともと理論はありましたが、先ほど言ったように、大量のデータが蓄積され、コンピュータがそれを計算できる処理能力を持つようになったことで実現しました。

【田原】また話を戻します。自動化の研究はいつごろ始めたのですか?

【藤巻】プロジェクトは15年からです。ただ、11年の段階でもうアイデアはありました。当時、画像認識の機械学習の自動化を研究している有名な専門家がNECのシリコンバレーにある研究所にいたので、一緒にやったらどうかという話になって、私もシリコンバレーに行きました。

【田原】じゃあ研究はシリコンバレーで。

【藤巻】はい。でも、12年からしばらく別の研究をやっていました。AIの弱点の1つは、認識や予測ができても、それを導く過程がブラックボックスになっていて、うまく説明ができないこと。その説明をできるようにする研究をやっていたら、会社に気に入られて、「まず、その事業化を先にやれ」と言われました。3年で目途がついて、15年から自動化の研究を再開しました。