人生100年時代に夢が持てないあなたへ

「人生100年時代」と聞いて、「AI(人工知能)が発達してもっと便利になったら時間ができるようになるし、何をしようかな」と前向きになれる人がどれくらいいるだろうか。消費税が上がっても給料がアップするわけでもないうえに、世の中の技術はどんどん進歩する。「AIを使いこなせる人間になるなんて無理」「後輩も責任も増えたのに、若さも体力もない。どれだけモチベーションを維持して働き続けられるか」などと後ろ向きに考えてしまう人のほうが多いのではないだろうか。

グラフは「ミドルの転職」サイトを運営するエン・ジャパンが行った、181人の転職コンサルタントへのアンケート結果だ。今後AIに代替されると予想する職種として、「経理・財務・会計系」「秘書・アシスタント・一般事務系」という答えが40%を超えた。数値化やパターン化しやすい領域の職種からなくなっていくと考えるコンサルタントが多いようだ。

アンケート結果は想定の範囲内だが、人ごとではない。自分の仕事は将来的にみて安全なのか。もっと働きやすい職場があるのではないか。もし転職をするとしたら、いつが狙い目なのか。日本有数のプロヘッドハンターで、日本の転職事情を長年見続けてきた、半蔵門パートナーズの武元康明さんを訪ねた。

いまの私の仕事、転職は必要ですか?

まず、AIに代替される仕事についてのアンケート結果を見せたところ、武元さんから返ってきたのは、意外な言葉だった。

「確かに機械化したほうが合理的な職種はたくさんありますし、パターン化できる事務職などは代替されるでしょう。しかし、日本の人口のピークは2008年。そこから減少していますから、今後ますます国内の労働人口は減り続けます。減ったぶんの労働力をAIや、業務を機械化することで賄うとしたら、仕事が失われることはないのではないか、と私は考えています」

事務系を中心に、AIや機械に代替されると予想される職種に就いていたとしても、多くの日本企業の場合は簡単にリストラされるわけではなく、どこか別の部署への異動などで雇用は保証される可能性が高い。また、働き手が少なくなるため、企業側は従業員が働きやすい環境をつくって退職者を減らし、終身雇用や各種制度に力を入れていくようになるというのだ。

「ある大手商社で退職者が増えたのですが、退職者が皆ベンチャー企業に転職してしまったことがありました。なぜ食い止められなかったのかを考え、働きやすくする制度に改善したところ退職者が減った、という事例もあります」