情状酌量してもらえるケース

――犯罪を揉み消す場合もありますか?

【サービス】就業規則の「会社の信用を著しく傷つける行為」とは、要するに犯罪が「外部に漏れて会社の名前が出た場合」という意味だ。たとえばセクハラでも「私、お尻を触られました」と、労働局に訴えたり、裁判沙汰になれば会社の名前が出るのでアウト。懲戒解雇もありうる。表に出なければ異動させるなどの処分で終わる場合が多い。要するに外部に漏れなければ甘い処分もある。

【食品】たとえばグループ企業の社員が痴漢行為をしたとか、暴力行為で警察沙汰になった場合、一般社員と幹部社員とで対応が違う。部長クラスが私的時間内で痴漢行為や児童買春で新聞に名前が出れば「会社の信用を著しく傷つける行為」として懲戒解雇にする。だが平社員が痴漢の容疑者になり、本人が否認している場合は事実が確定するまで処分は下さない。揉み消すわけではないが、会社として公表することもない。

【IT】うちでは人事部が懲罰委員会の資料をつくる。そのときに「情状酌量の余地があるか」を記載する欄がある。たとえば会社のためにやった、会社のお偉いさんの指示を受けてやったことがわかれば酌量の余地がある。その場合に懲戒解雇ではなく、出勤停止、あるいは減給にしようということはあるね。そうではなく私利私欲のために片棒を担いだとなれば酌量の余地がない。これは過去の犯罪事実に即した罰則を科すことになる。

【サービス】たとえば組織ぐるみで会社の金を使い込むなどの業務上横領をした場合、間違いなく懲戒解雇になる。だが、下っ端の社員が言われるまま帳簿の操作をした場合、諭旨解雇にとどめるケースもある。懲戒解雇になると退職金は出ないが、諭旨解雇は出る。恩情というより外に情報を漏らさないための口止めの意味もある。本人にも「おまえは悪いことをしたが、退職金を払っているからやったことを辞めてから言うなよ」と念押ししている。

【IT】ゼネコンの談合ではないが、明らかに会社のためにやった違法行為は最も軽いけん責程度にとどめ、ほとんど許される。社内的にも「彼はちょっとやりすぎたな」という程度。世間とのギャップはあるだろうね。

【サービス】揉み消しは会社の大きさと強さによってはやるだろうね。たとえば現場の作業中に死亡事故が発生しても表に出ないケースもある。マスコミも抑えられるぐらいの力を持っている企業もある。

【IT】他の大手企業では警察署、消防署、税務署など署のつくところのOBを天下りで入社させているところもある。情報を収集したり、問題が起こったときは、OBが一本電話をかけてお目こぼしをお願いしたり、マスコミに出ないようにすることもあるらしい。