「極端なユーザー」に話を聞きに行こう

私がリサーチの取っかかりとしてよく使うのは、「極端なユーザー」へのリサーチでした。一般的なユーザーではなく、プロやオタクのような「超ユーザーの人たち(A)」と「ユーザーではない人たち(C)」に話を聞くのです。

たとえばスマホに関するリサーチだったら、3台持ちで使いこなしているユーザーと、人生で一度もスマホを所有したことがない人、というふうに。

なぜこれら両極端な人たちに話を聞くべきか。

「スマホを持っていて、主に使うのはメッセージアプリとSNS」といったコアのユーザー(B)は、「すでに使ってくれている人」だからです。ものすごい不満や要望がないから、またそこそこのリテラシーがあるから使ってくれているわけで、出てくるのは「おサイフケータイ機能がついてるといいな」「もうちょっと軽かったらいいな」といった、現実的で顕在的なニーズのことが多い。言ってしまえば、誰でも考えつくレベルのアイデアに留まってしまうんですね。

それらを聞いて素直に反映しても、「あっ」と人を惹きつけるものにはなりません。改善で終わってしまうのです。

スマホを使わない人には“意志”がある

石川 俊祐『HELLO,DESIGN 日本人とデザイン』(NewsPicks Book/幻冬舎)

一方、AとCの人の話は、開発側に大きな気づきを与えることが多い。Aの場合は、開発者が想像もしていなかった、特殊な使い方をしていることがあります。すると、そのプロダクトに関する、隠されたニーズを発見することができるのです。

Cの場合も同様です。これほどスマホが普及しているにもかかわらず、あえて使わないユーザーには、「使わない」明確な理由が存在します。その理由を掘り下げていくうちに、多くの人が「そういうものだ」と無意識のうちに我慢している課題や、それを乗り越えるための手段が見つかるはずです。

つまり、極端なユーザーは、肯定的であれ否定的であれ、明確な意見や要望を持っていることが多く、それによって効果の高い調査結果を得ることができるのです。

(画像=iStock.com)
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