世界5カ国5000人に「世界でいちばんクリエイティブな国はどこか」と聞いたところ、日本人を挙げる人が最多だった。ところが「日本が世界一だ」と答えた人の割合は、日本人がいちばん低かったという。なにが原因なのか。デザインディレクターの石川俊祐氏が「デザイン思考」という考え方から解説する――。

※本稿は、『HELLO,DESIGN 日本人とデザイン』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/sihasakprachum)

もっと主観的でいい

デザイン思考を実践するために必要なマインドセットは、いくつかあります。まずはその中でも「主観」という、とくに日本のみなさんが欠かしがちな要素についてご説明しました。

デザイン思考において、「マインド」と「スキル」は車の両輪です。まっすぐ前に進むためには、両者を同じように大きく育てなければならない。どちらが大事というものでもなく、両方とも必要不可欠なものなのです。

けれどあえて言えば、日本のみなさんにまず意識していただきたいのはマインドのほうだ、とぼくは考えています。なぜなら、みなさんは、自分自身にかけている「ブレーキの力が半端なく強いから。

これは、いままでの社会人生活の中でしっかり身につけてきた、思考のクセとも言えます。このブレーキを外して車輪を前に進めるためにも、まずは「デザイン思考家として持つべきマインドセット」を知り、普段から意識することがファーストステップ。それがみなさんの「クリエイティブ・コンフィデンス」――「自分の創造性に対する自信」を育てる第一歩になるはずです。

人生にはクリエイティビティが必要だ

いまぼくは「クリエイティブ・コンフィデンス」という言葉を使いましたが、これもまた、IDEO(アイディオ)が提唱している概念です。しかし、「クリエイティブ」は「デザイン」と同じく、どうも誤解されがちなカタカナ。ワークショップでこの言葉を使うと、「あ、自分の話ではないな」という顔をされることが多々ありました。業種で言えば広告代理店やメディア、職種で言えば企画やデザイナーといった「都心で働くごく一部の人の仕事」を連想されてしまう。

でも、「クリエイティブ」は業種や職種とはまったく関係ありません。もちろん、小説やマンガ、映画といった、いわゆる作品をつくる力のことでもありません。

意志のある人生を送る。モノや体験をつくり、イノベーションを起こす。国が抱えているような大きな問題を解決する。

……こうした大小さまざまなところで発揮される「未来をつくる普遍的な力」こそ、クリエイティビティ――「創造性」と呼ばれるものです。

「自分には、周囲の世界を変える力がある」という自信。
「自分にはなにかを生み出し、実行する力がある」という自信。
「自分の考えってイケてるぞ、みんなに聞いてもらおう」と思える自信。

これらが、「クリエイティブ・コンフィデンス」なのです。