※本稿は、小笹芳央『モチベーション・ドリブン』(KADOKAWA)を再編集したものです。
「働き方改革」の本質をとらえているか
世の中はまさに働き方改革一色。「今さら何を言ってるの? ウチではもうフリーアドレスもテレワークもすっかり当たり前になっていますけど?」という方も多いと思うが、だからこそ、私には気になっていることがある。
あなたのチームや組織、一皮めくったら、腐り始めていませんか、ということだ。
過激な表現をしたが、具体的にいえば「追求したはずの効率性が下がった」ように感じたり、「社員に働きやすさを提供したはずが、社員同士の距離感が広がった」ような感覚を持ったりすることはないだろうか。もし思い当たる節があるなら、早急に手立てを講じる必要がある。
ここ数年、ベンチャーや中小企業の経営者、大手企業の人事担当役員から、こんな質問をされることが増えた。
「残業時間の削減はどのように進めていけば良いか」
「女性管理職比率はどうやって上げているか」
「副業解禁をするべきだろうか」
一つひとつの質問に答えながら、それらは局所的な課題であり、本質をとらえていないことに、なんともいえない違和感を覚える。
やみくもな改革は組織を疲弊させる
当社は2000年の創業以来19年、多くの企業の組織変革をサポートしてきた。その経験から言えることがある。部分的な変革を行って、その部分が良くなったとしても、組織全体としてはプラスにならないことがある。そして場合によっては、組織全体にとってマイナスになってしまうことすらあるということだ。
働き方改革には多種多様なメニューがあるが、その中のどれが自分たちにとって必要で大切な改革なのか。それを知ることなく、やみくもに改革に取り組んでしまうと、組織は混乱し、疲弊する。
さらに質が悪いのは、一度悪しき働き方改革が組織に浸透してしまい、混乱をきたすと、元に戻すのも容易ではないことである。一度変わった組織を戻そうとしたところで、舵がきかなければ最悪の場合、壊れる組織も出る。
そうならないためには、働き方改革の目的はあくまで「組織の生産性の向上」であることを、今一度、認識する必要がある。