自分自身を客観視できない人を採用しないワケ
組織の成果と個人の貢献との関係については、本人にもはっきりと区別できていないケースは少なくありません。場合によっては、自分に有利になるようにわざと混同させたまま話す人もいますから、ここは詳細なヒアリングが必要です。
ただ、1時間ほどみっちりと対話をすれば、だいたいの事実関係は聞き出せます。第一印象がよかった場合、そうして得られた本当の実績と第一印象との間に開きがなければ、その人は信用できるということになりますし、長く一緒に働いてもらいたいと思います。
問題は、第一印象と実績との乖離がある場合です。
たとえば前職では輝かしい実績を残していても、実際、本人はメンバーの1人にすぎず、重要な意思決定は別の人が行っていたという事実が判明したとします。すると、その人がいくら自信たっぷりに振る舞っていようと、その自信は「過信」であると判断しなければなりません。
過信とは、自分について客観視できず、過大評価しているということです。30歳くらいの若手であれば、その根拠なき自信は大きな仕事にチャレンジするときの推進力になるかもしれません。しかし私が欲しているのは、それなりの数の部下を率いて、バランスよく会社に貢献してくれる幹部です。自分自身を客観視できない人を、幹部候補として迎え入れることは難しいでしょう。
失敗を隠す人は、失敗を繰り返す
とはいえ、面談だけで実績のすべてがわかるわけではありません。迷ったら第三者の目を借りることになります。
企業の幹部、とりわけ執行役員や取締役候補として名前が挙がるような人は、どこかで私の知人・友人ともつながりがあります。そうでなくても、何らかのルートを通じてその人の評判は耳に入ります。
そのときに、前職で大きな失敗をしていたとわかることがままあります。もちろん失敗の質にもよりますが、失敗そのものが悪いわけではありません。大事なことは、その失敗から何を学んだか、そして次の機会にどう成功に結びつけようと考えているかということです。
最初の面接で本人がそれを語ってくれるのが一番です。そうすればその人の信用は大きく増すでしょう。
しかし、隠してもいずれはわかるような失敗の事実を、なかったことにしてしまう。場合によっては、自分が失敗したという自覚がない。そういう人は、せっかくの失敗の機会に学ぶことをせず、自分の責任を認めようとしない人だと判断しなければなりません。もしカインズの部長や役員として部門を率いるようになったら、その人はまた同じような失敗をするはずです。そのような懸念がある以上、軽々しく採用するわけにはいかないのです。