高校同期、豊田社長の才気
一流の人物というのは笑顔がすばらしい。顔が笑っているのに目はけっして笑っていないという人がいますが、本物の人物は目元もやわらかいものです。やはり目が笑っていないと、相手は心を開いてくれません。
一流と聞いて私の知人で思い当たるのは、かつて慶應義塾高校で机を並べたトヨタ自動車の豊田章男社長です。日本のリーディング企業を背負いつつ、現場を引っ張っているところに、彼の包容力を実感します。トヨタの経営がぶれることなく、グループ全体が同じ方向に進んでいるところを見てもまさに脱帽です。ニュースなどに登場している彼を見ると、演出のうまさということもあるかもしれませんが、自然体で振る舞っている感じです。2019年初め、アメリカ・デトロイトでの新型スポーツカーの発表時も、とてもいい顔を見せていました。
笑顔が大切ということは社員にも伝えています。2016年6月の社長就任時には「笑顔日本一のホテル」というスローガンを発表しました。京王電鉄グループのフラッグシップを自負するうえで最善のマナーと笑顔は欠かせません。お客様へにこやかに接すれば、誰もが「このホテルに来てよかった」と幸せな気分になってくれます。それはまさに“笑顔力”といっていい。そしてこれが、当社がめざす顧客満足(CS)にほかなりません。
笑顔づくりに関しては「スマイルコンテスト」を実施してきました。最初は2年半前、新宿・八王子・多摩のホテルで、全スタッフ参加で行われました。投票率は9割におよび、新宿では宴会洋食シェフのスタッフが1位でした。各ホテルで上位3名にベストスマイラーバッジを授与しています。その後、彼らを含め、毎回の得票上位者は「プラザスマイルアンバサダー」に就任してもらい、私どものホテル会報誌に紹介するほか、人材教育面のスマイルトレーナーも務めて笑顔を広げています。
カッコよさより、話しかけやすさ
昔はホテルの宴会サービス係のスタッフなどは、ピシッとしていて恐いような感じのほうが格好いいと思われた時期もありました。しかし、それではお客様はもちろんのこと、スタッフ同士でも話しかけづらくないでしょうか。そういうわけで、当ホテルでは話しかけやすさを重視して、笑顔を基本としています。
とはいえ、「笑顔日本一のホテル」という目標の永遠の課題なのですが、いつ日本一になれるかわからないし、もうなっているかもしれません。とにかく、いつかお客様から「笑顔が日本一ですね」と誉められるホテルをめざす。ゴールはまだ見えませんが、一歩一歩努力を積み重ねているところです。