フランス料理の祭典「ボキューズ・ドール」。メゾン・ド・タカ芦屋の髙山英紀シェフは、4年越しの本大会に今年出場し、世界一の座に挑んだが、結果は7位だった。高山シェフは「日本のフランス料理は技術や質では世界トップレベル。それでも勝てないのはもっとほかの部分に原因がある」という――。
メゾン・ド・タカ芦屋所属の髙山英紀シェフ

「料理界のオリンピック」に挑んだ日本人

フランス料理の祭典である「ボキューズ・ドール国際料理コンクールフランス本選」。「料理界のオリンピック」とも評される本大会に挑んだ1人の日本人がいる。日本代表として、フランス料理の頂きを目指した髙山英紀シェフ(メゾン・ド・タカ芦屋)は、日本大会、アジア大会を優勝し、本戦の舞台に立っていた。

日本中のフランス料理人にとって憧れの場である本大会。出場への道のりは険しい。まず日本予選を突破し、6人で争われる日本大会の決勝を優勝し、アジア大会に駒を進めなければならない。それから11カ国が出場するアジア大会を勝ち抜き、はじめてフランスで行われる本戦への出場権を得られる。ここまでに2年間の時間を要する。

日本勢の過去最高順位は、13年の浜田統之シェフの3位。今回、本戦までを圧勝で勝ち上がってきた髙山氏は、15年の本戦でも世界5位に輝き、4年越しの再挑戦となった今回は世界中からも注目が集まっていた。

「ボキューズ・ドールは大げさではなく、自分の人生をかけて勝負してそれでも届くかはわからないもの。料理人たちは何年もかけて準備をして、アメリカなんかでは代表選手に数億円の補助金が出るともいわれています。それだけ、世界中の料理人にとって栄えある舞台でもあるんです」(髙山シェフ)

日本のフランス料理は世界トップレベル

24カ国の代表選手たちが、5時間35分の間に皿盛り料理、大皿料理の課題料理を調理し、採点を競うのが大会のルールだ。今回の課題料理は「野菜と貝のシャリュトリューズ」と「骨付き仔牛のロースト」。トラディショナルでシンプルな料理をいかにモダンに独創性や自国の文化を反映し、様々な視点から完成度を高めるかということが評価のポイントとなった。

優勝に輝いたのは、デンマーク。次いでスウェーデン、ノルウェー、フィンランドと続き、髙山氏は7位となり、アジア勢最高の順位を残した。大会をこう振り返る。

「正直にいえば、この結果はただただ悔しい。長期間における準備と大げさではなく、料理人としてのすべてを注いだので。ただ個人だけで勝てないのもよくわかりました。わかりやすく言えば、この大会はF1のようなものなんです。ドライバーにあたる料理人がいて、それを支える何十人にもわたるチームジャパンで戦っていく。上位の北欧勢とは、このチーム力というか組織力に差を感じました。一方で、日本の和を取り入れたフランス料理には無限の可能性が広がっているという自信を深めることができた。課題もあるものの、日本のフランス料理は、世界のトップを争えるレベルなんだ、と」