日本がフランス料理「世界一」になる日

髙山英紀シェフ(左から2番目)

「ここ数年はボキューズ・ドールへの準備を最優先にしてやってきた」。4年越しの挑戦に、大袈裟ではなく料理人人生をかけたという髙山氏だったが、それでも頂点に届かなかった。

上位国が軒並み、大企業や国からの巨額のバックアップを受けて大会だけに集中していたのに対して、自店舗の運営との二足のわらじを履かざるを得なかったことも響いたのかもしれない。とくに近年はこれらの体制の差が諸外国と日本で顕著になってきている。

それでも、ボキューズ・ドールが自身にもたらした影響は大きかったという。

「バブルをピークに、日本のフランス料理店の数は減少傾向にあると思います。ただ、日本人が作るフランス料理の可能性は確実に広がっているし、間違いなく世界に誇れるものなんです。ガストロノミーだけではなく、ビストロも含めてこれまでの“こうあるべきだ”、というフランス料理像は良い意味で変わってきています」

「ボキューズ・ドール2019」プレートテーマの日本代表の料理

労力と必要な時間を考えると「私の挑戦は今年で最後です」と話す髙山氏の想いは、次世代の料理人へと継承されていく。

「ボキューズ・ドールで世界一を狙うには、挑戦した料理人が次の代表に蓄積されたノウハウを伝えていかないといけない。そうやって経験を紡いでいくことが今の私の使命です。日本の持つ伝統と文化を独自性に昇華できた時、世界の頂きにとどくと信じています」

この大会で日本が優勝すれば、フランス料理の国内での位置づけは大きく向上するだろう。それは日の目を見るまでに時間のかかるフランス料理人の育成をはじめ、未来への投資にもつながる。

来年の本戦へ向けて、日本大会、アジア大会を目指す料理人たちはすでに始動している。先人たちの紡がれた想いを背負い、日本代表の挑戦は続いていく。

髙山 英紀(たかやま・ひでき)
メゾン・ド・タカ芦屋 料理長
1977年福岡県生まれ。18歳でフランス料理の道へ。東京京橋のフレンチレストラン「シェ・イノ」にて約8年間すごす。2004年からフランスにて約3年半の修行。帰国後「メゾン・ド・ジル芦屋」の料理長に就任。2015年「ボキューズ・ドール2015」で5位、魚料理特別賞を受賞。2017年「ボキューズ・ドール国際コンクール」の日本大会で優勝。2018年「ボキューズ・ドール アジア・パシフィック大陸予選」で優勝。
(写真=ボキューズ・ドールJAPAN)
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