「熟年離婚は妻が切り出すもの」というイメージはもう古い。夫婦問題研究家の岡野あつこ氏は「最近では夫が妻に“三行半”を突き付ける熟年離婚が目立つようになった。主な理由は、夫の浮気、夢の実現化、妻への不満の3つだ」という。具体例を紹介しよう――。

夫から切り出す熟年離婚が目立つようになった

※写真はイメージです(写真=iStock.com/JackF)

ひと口に「熟年離婚」と言っても、実はひと昔前と比べ、その形態に変化が生じているのをご存じだろうか。10年前までは、「熟年離婚=妻から夫へ切り出すもの」というケースがほとんどだったが、ここ数年で夫から妻に三行半を突き付ける形の熟年離婚が目立つようになってきているのだ。

夫から妻に熟年離婚を切り出す場合、おもな理由は次の3つ。「夫の浮気」「夢の実現化」「妻への不満」――夫から妻へ離婚を切り出すケースの多くが、この3つのうちのいずれかに該当している。

よくある例で考察してみよう。

「本当は妻ではなく、この女性と一緒になるべきだった」

<61歳・会社員・男性のケース>
結婚生活33年目。専業主婦の妻との関係がギクシャクしはじめたのは、50代にさしかかろうとしていた時。人事異動に伴い職域が変わったことで帰宅時間が遅くなり、妻との生活時間帯がズレはじめたことがきっかけだった。
「夜遅く帰宅した時に、物音を立てて起こしてしまうと申し訳ないから」という理由で、夫婦の寝室を別にすることに。帰宅時間を気にせず生活できるようになったおかげで、終電ギリギリまで仕事に集中できるようになった一方、遅くまで酒を飲んで帰っても文句を言われる機会もなくなった。
10歳年下の同僚の女性と深い仲になったのは、そんなタイミングだった。お互いに家庭を持っていたものの、毎晩のように仕事のことや将来のことを話しているうちに、「本当は妻ではなく、この女性と一緒になるべきだったのではないか」という思いが大きくなっていった。それから約10年間は、自分も相手の女性も、離婚の覚悟を決めるための時間だったと思っている。2人の決心がかたまった昨年、定年退職を迎える際に「ひとりになりたいんだ」と妻に離婚を切り出した。

とくに理由も言わず、「ひとりになりたい」「ひとりの時間がほしい」と切り出す夫の背景には、多くの場合「浮気」が存在していると思っていい。本当に「ひとりになりたい」のであれば、夫婦関係を続けながらひとりの時間を持つことはいくらでも可能だからだ。

人生100年時代。定年退職のタイミングで熟年離婚をし、第二の人生を新たなパートナーとスタートさせたいと願う男性は年々、増えている印象を受ける。