ウェルビーFSの設立は1982年。当初はスーパーマーケットへ食料品などの販売のかたわら、社員食堂などの給食事業を手がけていました。介護食の気づきのきっかけは、2000年から始めた介護保健施設での給食事業でした。

常食(写真左)をペースト状に砕き、再度成形したソフト食(同右)。味も見た目も寿司そのものだ。

「施設の厨房で食事を作って提供するのですが、時間が経ち、入居者の要介護の段階が上がっていくと、常食を摂れない方が増えてきます。当時、そのような方にはミキサーで細かく刻まれた食事が提供されていました」

社長の古谷博義さんは、そう振り返ります。ドロドロで彩りのない食事でした。それにミキサー食は、気管に入って肺炎を起こすこともあります。

「入居者が自分の親だとすれば、それを食べさせたいとは思わなかった」

と古谷さん。「何とかできないか」と考えていたとき、事業に転機が訪れました。長引く不況に08年のリーマンショックが重なり、社員食堂や社員寮の需要が大幅に減少したのです。

「社食事業は続けられないと思いました。一方で、介護施設との取引を通じて、高齢化が想像以上のスピードで進んでいるという感覚がありました」(古谷氏)

機能性介護食と銘打ったソフト食が誕生したのは、その時期です。試験的に独自開発したソフト食を提供したところ、喫食率が3割も上がったのです。

そこで古谷社長は社食からの撤退を決断、福祉系の施設に販路を切り替えました。小さな気づきが、事業の領域を変えたのです。