「これまでにないおにぎり」に挑戦した冷凍食品
「今日はカレーのおにぎり」――。2017年3月、発売後に投入されたCMは、嵐の櫻井翔氏がナレーターから、カレーのおにぎりを作るという「無茶振り」をされる場面から始まる。手のひらにラップを敷いてご飯を乗せ「無理でしょ」と笑いながらドロドロのカレーと格闘する櫻井氏。満を持して登場するのが「おにぎり丸」だ。
「おにぎり丸」はおにぎりの「具」を冷凍した商品だ。カップ状のパッケージを逆さにすると、丸い形に凍った具材がご飯の上にポトンと落ちる。あとは握って、ご飯の熱で自然に解凍されるのを待つだけ。炊きたてご飯なら15分、保温ごはんなら20分ほどで食べられる。「おにぎり丸」を担当する開発マーケティング部の竹岡千賀氏は「これまでにないおにぎりができるもので、同時にこれまでにない冷凍食品でもある。それを訴えるのが当時の狙いでした」と語る。
発売から2年で堅調に売り上げを伸ばし、具材の種類は当初の5種類から9種類に増えている。「豚カレー」「牛すき焼き」「牛カルビと3種のナムル」「鶏の梅あえ」……。一見すると定食屋のメニューのようなラインアップは、「あのおかずがおにぎりに!」というキャッチコピーの通りだ。
「単におかずを凍らせただけではなく、ご飯となじみやすいしっとりとした食感や、冷めてもおいしい味付けにこだわりました」(竹岡氏)
1日100個のカレーおにぎりを試食
開発を始めたのは2014年頃から。特に苦労したのが冒頭のCMでも登場した「握れる」カレーの実現だ。汁気の多いカレーを、凍らせて固形にする。アイデアさえ浮かんでしまえば簡単そうにも聞こえるが、商品化への道のりは困難を極めた。
「口当たりの滑らかさだけを追究してしまうと、解凍したときにご飯からルーが染み出してしまう。かといって粘度を濃厚にし過ぎると、ご飯となじみにくかったり、満遍なく溶けなかったりしてしまう」(竹岡氏)
試作を重ね、開発当時の担当者は1日に100個のカレーおにぎりを食べ比べたこともあったという。同社の冷凍技術の蓄積がなければ、「おにぎり丸」は日の目を見なかっただろう。