【田原】ひとつ聞きたい。人のつながりは「地域社会資本」ですね。お金は測りやすいけど、社会資本はどうやって測るんですか?

【柳澤】いま仮想通貨のアプリをつくって、従来の通貨と色分けすることを考えています。たとえば誰がつくっているのかわからない野菜をスーパーで買うのと、生産者の顔を見て「ありがとう」といって買うのが同じ値段だったとします。後者は人のつながりが増えていますが、従来の通貨ではその違いを出せない。だから、人のつながりを増やすときにしか使えない通貨を発行したらどうかなと。

【田原】具体的にどういうこと?

【柳澤】普通の通貨は持っているだけで利子がついて増えますが、僕らが考える通貨は、人のつながりを増やさないと増えなくて、何もしないで置いておくと減っていくイメージです。たとえば「まちの社員食堂」で人にビールをおごれば逆に増えたりすると面白い。

【田原】なるほど。

【柳澤】人とのつながりで増える通貨の流通量が増えていけば、格差がある程度縮まり、資本主義が健全化されるというのが僕たちの仮説です。人のつながりは面倒くさいところがあるので、それを促す場も必要。いま「まちの」シリーズの活動とリンクさせて設計しているところです。

【田原】もう1つの「地域環境資本」のほうはどうですか?

【柳澤】そっちはまだ手つかずです。そもそも自然や文化資産を会社がやることなのかどうかわからなくて。

【田原】これから会社をどうしますか。成長させる?

【柳澤】資本主義は否定していないので、会社を大きくする努力は今後も続けます。鎌倉にも物理的な限界があるので、人数がもっと増えたらもう一カ所、別の町に拠点を置いてコミットしていくかもしれません。

【田原】カヤックは自分で何かつくれるクリエイターばかり。大きくするといっても、独立する人が多くて大変じゃないですか?

【柳澤】独立は止めないですが、経営者としては難しい時代になりました。1人で食べていける時代だから、ビジョンが相当に良くないと会社に残る意味がない。「面白法人」というキーワードで20年やってきましたが、「鎌倉資本主義」が次のビジョンになって、みんなを惹きつけられたらいいなと思います。

田原さんから柳澤さんへのメッセージ

対談前に資料を読みましたが、最初はカヤックが何をやっている会社なのか、よくわかりませんでした。話を聞いてみたら、それも納得です。「誰とやるか」「どこでやるか」を重視していて、「何をやるか」は二の次。とにかく面白いことをやろうとしているから、ジャンルも限定されていない。

人のつながりに注目した地域資本主義の考え方も面白い。いま地方は人口減で、各自治体は打つ手に困っている。カヤックのような会社が各地で活動すれば地方で働く人が増えて、日本全体も元気になる。期待しています!

田原総一朗の遺言:人のつながりを重視しろ!

(構成=村上 敬 撮影=枦木 功)
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