【柳澤】放浪に決まった友人はアメリカに行って、中国人と組んで絨毯を売っていたそうです。2年間連絡がつかなくて、起業する約束を忘れているんじゃないかと思ったころに「戻ります」と連絡がきました。もう1人は、院でインターネットやデータベースの研究をしていました。

カヤック 代表取締役CEO 柳澤大輔氏

【田原】再会した後はどうした?

【柳澤】まだ何をやるかを決めていなくて、まず「面白法人」というコピーを決めました。その次に決めたのは給料。先輩のところに起業のあいさつにいったら、「友達同士で会社をつくると将来お金で揉める」とアドバイスをもらったので、サイコロで給料を決めることにしました。これはいまも続いていて、サイコロを振って6が出ると6%というように、出た目によって手当の額が変わります。いま給料をサイコロで決めている上場企業は、世界でも僕たちだけじゃないですかね。

【田原】そんなのむちゃくちゃじゃない。サイコロ振らなくても揉めないやり方はあるでしょう?

【柳澤】素直でしたから、先輩のアドバイスにしたがって何か考えようと頭をひねった結果です。でも、よかったですよ。誰を偉くして報酬を上げるのかという評価制度が、その会社の文化をつくる。サイコロ給を入れたことで、面白く働くことを重視するという文化になりましたから。

【田原】次は何を?

【柳澤】お金で揉めたくないから、次は職種を揃えました。お金で揉めるのは、「俺のほうがやってる」「いや、自分のほうが頑張った」という評価のズレが原因です。ただ、同じ職種同士、たとえばエンジニア同士なら誰に技術力があり、誰が給料を多くもらえばいいのかがお互いにわかります。営業も、営業マン同士ならだいたい評価が一致する。揉めるのは違う職種間で比べるから。シンプルに職種を揃えれば、みんな納得するだろうと考えました。

【田原】職種を絞るって、具体的にどうしたの?

【柳澤】全員クリエイターにしました。もう少し細かく言うと、デザイナーとプランナーとエンジニアだけ。いまもそれは変わらず、社員の9割はクリエイター。そうやって職種を揃えてからそれぞれが何をやってお金にするかを考えれば、自然と事業はうまくいくと考えました。

【田原】実際、最初は何をやってお金を稼いだのですか?

【柳澤】いろいろです。ホームページをつくったり、企画を考えたり、デザイン業務でチラシをつくったり。

【田原】そんな誰でもやっているような仕事じゃ面白くないじゃない。

【柳澤】それがそうでもないんですよ。面白法人は面白がることだから。会社をつくるだけで面白いんです。それに、みんながやっている仕事でも、人から面白いと言われるために、ほかの会社がつくれないものをつくるようになっていく。そうすると、よくある仕事も面白くなります。

【田原】ほかの会社がつくれないようなものってなんですか?

【柳澤】いま頼まれてつくっているのは約2割で、あとはゲームをつくったり、葬儀会社、結婚式、不動産など、いろいろとやっています。