外国人労働力なしに日本の経済社会は回らない

もちろん、背景には少子化がある。少子化による若年層の働き手の減少がジワジワできいてくるのだ。実は就業者のうち65歳以上を除いた64歳以下の就業者数をみると、1997年6月に6171万人のピークを付けて以降、ジワジワ減少している。2018年12月では5801万人にまで減っているのだ。もはや外国人労働力なしには、日本の経済社会は回らないところまで来ているのである。

日本で働く外国人は厚生労働省に届けられた2018年10月時点で146万463人。2008年は48万6398人だったので、この10年で100万人も増えたことになる。外国人を雇用した場合、事業者は厚生労働省に届け出なければならないことになっており、毎年10月時点の人数などを、「外国人雇用状況の届出状況」として厚労省が公表している。

146万人のうち23.5%に当たる34万3791人が留学生などとして入国しながら働いている外国人である。本来の就労ビザではなく留学生という資格で入国しながら働いている、という意味で「資格外活動」と呼ばれる。

外国人が働いている業種をみると、「卸売業、小売業」が12.7%、「宿泊業、飲食サービス業」がやはり12.7%で、両方で25.4%を占める。ほぼこうした業界で働いている外国人が留学生だということを示している。

事実上の「移民解禁」と言える仕組み

改正入国管理法は、留学生を働かせるという抜け道ではなく、真正面から雇用しようという姿勢に転換した点で、大きな一歩だ。だが、彼らが5年たったら帰る「一時的な労働者」と考えていると大きな禍根を残すことになるだろう。

東京の荻窪で出会った居酒屋で働く中国人女性は、夫と共に来日しており、夫はコンビニで働いているという話だった。口を濁していたが、おそらく留学生の資格でやってきているのだろう。この夫婦に子供ができれば、日本語教育をどうするのか、という問題に直面する。

今回の改正法に盛り込まれた特定技能2号という資格は、期限3年だが更新が認められ、家族帯同も許される。永住権の取得に必要な年限にもカウントされる。この資格での在留許可はしばらく出されないことになっているが、建設、造船・舶用工業、自動車整備業、航空、宿泊業の5つの業種から始まることになっている。つまり、技能実習生や特定技能1号での期限が来たら、2号に切り替わって長期滞在を許すという構図が出来上がっているのだ。事実上の「移民解禁」と言ってもよい。

これによって日本人の働き方も変わる。職場にさまざまな文化的バックグラウンドを持った外国人がいるのが当たり前になり、そうした人材を管理し使いこなすスキルが管理職に求められることになる。ひとりの日本人が多数の外国人を管理するといった職場も当たり前になってくるだろう。日本の地方都市の普通の職場でも、外国人と働くのが当たり前という時代が目と鼻の先まで来ているのだ。

磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
経済ジャーナリスト
1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。
(写真=時事通信フォト)
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