日本に定住する外国人が増えるのは明らか

導入される特定技能1号の就労資格は、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、素形材産業、産業機械製造、電子・電気機器関連産業、飲食料品製造業、ビルクリーニング、介護、農業、漁業、宿泊業、外食業の14業種に認められる。多くが技能実習の対象になってきた業種だが、宿泊や外食などは今回初めて正式に門戸が開かれた。もちろん、日本語が一定レベル以上できることや、必要な技能を身に付けているというのが建前で、業界団体などが行う試験をパスする必要がある。

在留期間は5年で、家族の帯同を認めず、永住権を得るための年数にもカウントされない。あくまで、出稼ぎとして受け入れるのであって、そのまま日本に居続けることはない、というのが建前だ。というのも安倍晋三首相は繰り返し「いわゆる移民政策は採らない」と言い続けており、霞が関も「移民」を前提にした制度だと言うことができないのだ。

だが、現実には、今回の法改正をきっかけに、日本に定住する外国人が増えていくことになるのは明らかだ。実質的な移民受け入れに舵を切ったと言うこともできる。

働き手の数が過去最多でも、人手不足は深刻化

人手不足が深刻化しているのは、少子化で働き手が減っているからだ、と思われがちだ。確かに少子化の影響も大きいのだが、今現在は、働き手の数は過去最多を更新し続けている。総務省の労働力調査によると、就業者数、雇用者数とも第2次安倍内閣が発足した翌月の2013年1月以降、72カ月連続で増え続けている。2018年10月の就業者数は6725万人と過去最多を更新、雇用者数も5996万人と6000万人の大台にあと一歩に迫っている。

安倍首相がアベノミクスの成果として強調するのが、この就業者、雇用者が大きく増えた、という点だ。確かに第2次安倍内閣が発足した2012年12月の雇用者数は5490万人だから500万人も増えたことになる。雇用の場が生まれているのだ。

だが、よく中身を見てみると、増えているのは女性と高齢者である。女性の就業者は2018年10月に2991万人と過去最多を更新、65歳以上の就業者も2018年9月に886万人と過去最多を記録した。2012年12月と比べると、女性就業者は340万人あまり、65歳以上就業者は310万人あまり増加している。15歳から64歳の女性の就業率は71%を超えた。

それだけ日本人の働き手が増加しているにもかかわらず、人手不足が深刻化しているのだ。団塊の世代がどんどんビジネス界から去っていく中で、人手不足は間違いなく今後さらに激しくなる。ちょっとやそっと景気が悪くなったくらいでは、人手不足は解消しないだろう。