はしご受診は、健康面でも損

初診料がよりたくさんかかるケースは、時間外受診だけではない。「はしご受診」あるいは「ドクターショッピング」と呼ばれるのがそれに当たる。病気やケガの治療中に、医師からの紹介によらず自分の判断でいくつもの病院・診療所を受診する行為だ。

「医師が話をよく聞いてくれない」「医師の説明に納得がいかない」「期待するほど回復しない」など、その行為に至る理由はさまざま。一刻も早く病気を治したいという気持ちがそうさせるのか、はたまたウインドーショッピングを楽しむがごとく、軽い興味本位でさまざまな医師の診療を受けてみたいということなのか。1度始めるとやめられないのも、はしご受診をする患者の特徴らしい。

はしご受診によって満足を得られることもあるのかもしれないが、デメリットが少なからずあることは知っておきたい。

まず初診料は、それぞれ病院ごとに払わなければならない。もし、同じ病院でのみ受診するのであれば、2回目以降は「再診料」となり安くなる。その差はおよそ2000円ほど。自己負担は1~3割だから「さほど大きな出費にならないじゃないか」と考えるかもしれない。

だが、医師の紹介によらず新規で別の病院を受診すれば、検査も一からやり直しとなる。当然、その費用が余計にかかるうえ、検査内容によっては体に大きな負担がかかることになる。同じような薬を処方するのにも新たな医療費がかかり、複数種類の薬の重複によって副作用の心配も出てくる。

はしご受診が可能であることは、病院を自由に選んで受診できる日本ならではの恵まれた環境があればこそといえるが、医療費がかさむため社会問題にもなっている。治療に対する不安や不満があるなら、医師と率直に話し合うのが先決だ。あわせて、「セカンドオピニオン」を受けるのもいいだろう。それでも転院したいなら、紹介状を書いてもらうのがせめてもの良策といえるのかもしれない。

結論:終了間近の“かけ込み受診”は大損

注:「入院を必要とする」「他の病院から紹介状を持参している」「当日時間内に受診したが、症状が悪化し、時間外に再受診した」などは、「緊急やむをえない事情」とみなされ、保険が適用される「時間外加算」の対象となる。

長尾和宏
医師、長尾クリニック院長
1984年東京医科大学卒業、大阪大学第二内科入局。95年長尾クリニック開業。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、指導医。『その医者のかかり方は損です』など著書多数。
 
 

早川幸子
フリーライター
女性週刊誌やマネー誌を中心に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を手がける。著書に『読むだけで200万円節約できる!医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』。