幸せの基準となる4つの哲学

幸せについて論じてきた哲学はたくさんあります。幸福論と名のつくもの以外にも、幸せの基準となる哲学を提起してきたものを分類すると、次の4つに整理できるように思います。(1)功利主義、(2)快楽主義、(3)タオの思想、(4)禁欲主義です。それぞれ簡単に紹介していきたいと思います。

まず(1)の功利主義というのは、「最大多数の最大幸福」のスローガンで知られる思想で、いわば効用の最大化こそが幸福であるとするものです。イギリスの思想家ベンサムが掲げたものです。彼は快楽と苦痛を比較して、快楽が多くなるように考えるべきだとしました。これは快楽計算と呼ばれるものです。

この基準に従えば、幸せは簡単に計算できます。快楽や効用が最大になるようにすればいいだけですから。経済的豊かさだけを追い求めていた一昔前の日本は、この基準を採用していたといっていいでしょう。

次に(2)の快楽主義です。これはヘレニズム期の哲学者エピクロスが唱えたもので、快楽を満たした後の心の落ち着いた状態を快楽ととらえるものです。快楽主義の名前が誤解を与えているのですが、必ずしも酒池肉林を意味するわけではありません。そうではなくて、あくまで心身を満たすことに重点を置いているのです。

したがって、この基準に従うと、お腹が満たされない限り幸福にはなれないということになります。ただし、食べ過ぎては逆に不幸になるということです。

ストイックな人は幸せなのか

(3)のタオの思想というのは、中国の思想家老子が唱えたものです。タオとは、宇宙の原理を表す「道」のことです。この原理に従っていれば、幸福になれると考えます。中でも「足るを知る」という言葉が象徴的です。同じく心の平穏を指すわけですが、快楽主義とは異なり、今あるものに目を向けて満足せよと説くわけです。

この基準によれば、今あるものに目を向けさえすれば幸せを感じることができるということになります。

最後に(4)禁欲主義です。これはたとえば、仏教に影響を受けたドイツの哲学者ショーペンハウアーの幸福論や、ヘレニズム期のストア派の立場です。いずれにしても我慢によって心を落ち着かせるもので、快楽主義やタオの思想とは真逆です。

この基準に従えば、我慢して欲を抑えることで幸せになれるわけです。ちなみに、禁欲主義者のことをストイックと形容しますが、これはストア派から来ている表現です。