4つの哲学から幸せを考える

さて、ここで以上の4つの基準を具体的な例に当てはめて考えてみましょう。

事例1 スター選手の現役引退VS生涯現役で頑張る

レスリング吉田沙保里さん(36)のが現役引退を表明しましたが、まだまだやれそうな感じがして衝撃的でしたよね。一方、世界最年長のプロサッカー選手である三浦知良さん(51)のように、生涯現役で頑張っている人もいます。いったいどちらが幸せなのか?

(1)の功利主義からは、引退したほうが活躍できるかどうか、もっというと儲かるかどうかで幸福が決まるということになります。(2)の快楽主義からは、納得のいくプレーができないと満たされないというのなら、引退するほうが幸せなのかもしれません。(3)のタオの思想からは、あるものに目を向けるなら、今できる範囲でのプレーに納得することで、幸せになれるのではないでしょうか。(4)の禁欲主義からは、悪あがきせずに引退したほうが幸せになれるでしょう。

事例2 今の会社に居続けて出世するVSマーケットバリューを高めるためのスキルアップ

事例2はキャリアについてです。ビジネスパーソンは常に向き合うテーマでしょう。

(1)の功利主義からは、効用を拡大するという意味で、スキルアップ転職をした方が幸せになれるでしょう。(2)の快楽主義からは、今満たされてないなら転職して満足したほうが幸せになれます。(3)のタオの思想からは、あるものに目を向けるということで、今のままで幸せになれます。(4)の禁欲主義からは、もっと上に行きたいという欲求を我慢することではじめて、今の状態を幸せと感じられるようになります。

事例3 都会で頑張り続けるVS田舎でスローライフを送る

事例2の極端なバージョンだといっていいでしょう。ライフスタイルそのものを変えるわけですから。今はUターンとかが増えているので、田舎に戻りたいという人も多いと思います。私自身が都会から山口に移って住んでいるのでその一人です。

(1)の功利主義からは、都会のほうがお金が儲かるので、幸せになれます。(2)の快楽主義からは、都会の物質的なものによって満たされれば、そのほうが幸せになれます。ただ、田舎での自由な時間や自然によって満たされるというなら、そのほうが幸せになれるのでしょう。(3)のタオの思想からは、ないものではなくてあるものに目を向けるので、都会にいる人は都会の生活が、そして田舎にいる人は田舎の生活がそれぞれ幸福なのです。(4)の禁欲主義からは、都会での生活をあきらめるのが幸せということになります。

事例4 恋人としてドキドキし続けるVS結婚して落ち着く

事例4は、今付き合っている人と、恋人としてドキドキし続けるか、結婚して落ち着くかです。恋や結婚も、人生の幸福にとっては重要な要素ですから。

(1)の功利主義からは、ドキドキし続けるほうが快楽が増すのではないでしょうか。(2)の快楽主義からは、ドキドキに満たされて心が落ち着くという形で幸せになります。(3)のタオの思想からは、ないものではなくてあるものに目を向けて幸福になるので、恋人のままならドキドキに目を向ければ幸せになれますし、結婚なら落ち着いた生活に目を向ければ幸せになれるでしょう。(4)の禁欲主義からは、ドキドキをあきらめたほうが幸せになれるでしょう。

確固とした価値基準がなければ、幸せにはなれない

このように、どの基準を採用するかで、幸せのカタチは変わってきます。したがって、自分がどういう基準で幸福を判断するのか、ここに紹介した4つの中から決めるのがいいと思います。それは自分の価値観を確認するということでもあります。

そうすれば、どのような場面においても、迷うことなく判断することができるでしょう。大切なのは、どの基準が正しいという話ではない点です。幸せは人それぞれですから、自分が幸せだと思えればそれでいいのです。ただ、そのためには確固(かっこ)とした基準が必要なのです。自信を持って選択したという気持ちが、後悔の念を払しょくするからです。

ぜひ幸せの基準と事例への当てはめを参考に、あなたらしい幸せのカタチを見つけてください。

(写真=時事通信フォト)
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