メジャー新人投手の“お接待”から爆発

ハイチュウの米国版。(撮影=横溝浩孝)

ハイチュウは、1975年に発売し、日本では40年以上にわたって愛されてきた。アメリカで正式に販売開始したのは2008年のことだ。

「初めはハワイで日本人観光客向けに発売したが、現地の人々から好評を博し、本土での展開を始めました」

そう語るのは、ハイチュウを製造する森永製菓の新井徹社長だ。

インタビューに応じる新井徹社長。

実は約20年前にもテストマーケティングを行ったが、その際は「甘さ」「大きさ」「色の派手さ」が足りないと不評だったという。しかし、寿司が世界中で受け入れられたように、ここ十数年で、ローカルな味の好みに合わせずとも、固有のものとして受け入れられるようになった。「食感や細かな味の違いを理解する人が世界中に増えたという実感があります」。

しかし、販路の確保には苦心した。日系チェーンやスーパーの「アジアンコーナー」では安定的に売り上げが伸びたが、醤油の隣に置かれていることもあった。キャンディー売り場に置いてもらうことすら当初は難しかった。

アメリカでのブームの火付け役となったのは、当時メジャーリーグのボストン・レッドソックスに所属していた田澤純一投手だ。「メジャーリーグには、ブルペンに入る一番若手の選手が飲み物と軽食を用意するという習慣があるそうで、田澤選手がハイチュウを置いたところ、ほかの選手たちから『毎回置いてほしい』との強い要望が出たのです」と振り返る。

「しかも偶然、レッドソックスのアジア太平洋広報担当とご縁があって、プロモーションに助力してくれまして、ブームが巻き起こったのです」

その後、レッドソックスやロサンゼルスのドジャース、エンゼルスなどとチーム契約を結び、宣伝の代わりに商品を提供したり、スタジアムでのサンプリングを行ったりした。

「そこで自信をつけ、全米200校のハイスクールのスポーツクラブでのサンプリングをしました」。メジャーリーグでの人気をきっかけに、地元資本の店やナショナルチェーンのバイヤーからも認められ、販路の拡大へ繋がった。今では、新聞スタンドやコンビニでも取り扱われる人気商品となった。