事業内容を決める前に「会社の箱」をつくった

【田原】それでユビキタスコミュニケーションズ、いまのアトラエを設立した。

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。本連載を収録した『起業家のように考える。』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

【新居】はい。でも実はつくったときには事業内容を何も決めていませんでした。辞める直前まで本当に忙しくて、考える暇が全くなかった。あてもないまま会社の箱をつくった感じです。

【田原】でも、ぼんやりとやりたいことはあったわけでしょう?

【新居】会社は辞めましたが、周囲からはたくさんお声がけをいただき、その中にはいろいろとビジネスチャンスもありました。労働集約型のやり方ではなく、ほかの仕組みで社会に価値を提供できたらいいなという考えはありました。その中の1つがオンライン上で人と組織をマッチングするサービスでした。

【田原】どんなサービスですか?

【新居】インターネットやテクノロジーを活用したビジネスモデルです。求職者と求人企業をマッチングするのは同じですが、間に人を介さずにマッチングさせる。人が入らないぶんコストダウンでき、求人企業にとっては手数料が安いというメリットもあります。

子会社時代とほぼ同人数で8倍の売り上げ

【田原】すぐそのサービスを開始したんですか?

【新居】最初はインテリジェンス時代と同じく、アナログな、人による営業が中心の人材紹介業をやっていました。当時はいまよりベンチャー企業の資金環境が悪くて、自分たちでキャッシュを稼ぐ必要があったので。

【田原】インターネットに移行するまでどれくらいかかりましたか。

【新居】最初の3年くらいはアナログなやり方を中心としていました。おかげさまで2010年以降はほぼ完全にインターネットに移行。現在はインターネット求人メディア「Green」、さらに人工知能を活用してビジネスパーソン同士をマッチングするアプリ「yenta」といったサービスを展開しています。「Green」の利用企業は6000社超。ITやインターネットサービスを展開しているお客様が多いですね。

【田原】いま売り上げはどのくらいですか。

【新居】二十数億円です。社員は約50人。インテリジェンスの子会社を経営していたときとほぼ同じ人数ですが、売り上げは8倍大きい。これも労働集約型のビジネスから脱却したことが大きいと思っています。