やる気はあるのに会社で活躍できないワケ

【田原】アトラエは、“エンゲージメント”を可視化して分析できる「wevox」というツールも企業に提供している。エンゲージメントって何ですか?

【新居】硬い言葉で定義すると、「組織や職務との関係性に基づく自主的貢献意欲」です。働く人たちのエンゲージメントが高ければ生産性も高まりやすく、逆に低い組織では創造性や革新性も生まれにくい。いま組織マネジメントの世界でもっとも注目されている概念の1つです。

【田原】よくわからないな。モチベーションと似たようなものですか?

【新居】別の概念です。モチベーションは行動するための動機付け。たとえば「家族を養うために働く」とか「自己実現のために頑張る」など個々人が感じているもので、個人ゆえに外部から影響を与えづらいうえにブレやすい性質を持っています。一方、エンゲージメントは会社や仕事との関係性に基づくもの。「この仲間と一緒に働きたい」「この仕事に価値ややりがいを感じる」など必ず対象が存在し、外部からも改善可能で、基本的にはブレにくい。

【田原】ということは、自分の働くモチベーションは高いけれど、いまの会社や仕事とは合わず、エンゲージメントは低いという状態がありうる?

【新居】まさにその通りです。

なぜ日本の大企業は「ダメ」になったのか

【田原】言葉はともかく、従業員のやる気が大事だというのはよくわかりますよ。松下幸之助さんも「社員が幸せにならない会社は絶対に成功しない。社員を幸せにして、いかにやる気を高めるのかが大事」と話していました。まさに日本の家族経営を代表する企業で、実際に社員のロイヤルティーは高かったと思う。ただ、そのパナソニックにしてもいまは振るわない。パナソニックだけじゃない。三菱重工業にしても東芝にしても、ぜんぶダメですね。

【新居】現場の社員一人一人は、非常に優秀です。でも、上にいる人たちがわかってないから、現場の知恵や意欲が活かされていないんじゃないかと。

【田原】でも、日本の大企業の社長はサラリーマンで、現場出身ですよ。現場から出てきたのに、どうして現場の声を聞かなくなっちゃうんだろう?

【新居】どうしてでしょうね(笑)。現場において優秀な人と、経営者として優秀な人が、必ずしも一致しないからかな。さらにいろんなしがらみもあり、日本の大手では本当に意欲ある有能な人が経営者になっているとは言いきれない気がします。

【田原】それはあるね。僕は40~50代のときに日本の大企業をたくさん取材したけど、大きな仕事をした人は、だいたい常務どまり。社長になるのは、仕事を無難にこなして、社内で敵をつくらない人たちだった。