宇宙飛行士と高齢者の共通点とは

宇宙飛行士の地球帰還後の状態に似ているのが、実は、寝たきりの人に大きく関わっているといえる「廃用症候群」です。横になったまま体を動かさないでいた結果、宇宙空間に長期間滞在したときと同じように、筋肉が萎縮して骨量も減少してしまいます。廃用症候群によって、自分で体を起こすことができなくなるという悪循環に陥り、さらには心肺機能や認知機能が低下するなど、全身にも悪影響を及ぼしていきます。廃用症候群は、大ケガ等で長期入院していた若者でも起こりますが、高齢者に認めやすいです。

日本人は世界有数の長寿国(平均寿命は男性81.09歳、女性87.26歳)ですが、元気に生活できる、いわゆる「健康寿命」とは約10年前後の乖離があるといわれています。つまり、平均寿命と健康寿命の間の約10年間は、寝たきりの状態を含め日常生活が制限されているというわけです。

高齢者が寝たきりになる要因の代表的な疾患としては、脳卒中後遺症や認知症、転倒による骨折などが挙げられます。リハビリ科専門医の視点に立つと、脳卒中や骨折で入院を余儀なくされても、正常な身体機能の廃用が進行しないうちに、なるべく早期からリハビリを行うことで寝たきりを防ぐことは可能です。皆さんもご両親や身近の方が脳卒中になったり、骨折してしまったりした場合、ぜひ早期からのリハビリを勧めてください。

ただし現在の医療では、原則として患者さんが元通りに動けるまで入院することは推奨されておらず、居宅や施設である程度の生活ができるような目途が立つと退院の説明が始まり、在宅や施設でもリハビリを続けるよう指示されます。そのため、実は在宅や施設でリハビリをきちんと続けられるかどうかが、寝たきりになるかどうかの人生の分かれ道になる場合も少なくありません。