次に食事についても、簡単にご説明します。筋肉を増やすなら、原料となるたんぱく質を肉や魚、大豆などから摂りましょう。骨を丈夫にするなら、骨の成分であるカルシウムも牛乳や乳製品、小魚などから摂取しましょう。キノコや魚などに多く含まれるビタミンDを併せて摂ってはじめて、カルシウムがスムーズに体内へ吸収されます。

これらの栄養素は食品から摂るのが望ましいのですが、どうしても不足していることが明らかであれば、サプリメントからの摂取を検討してもいいかもしれません。ちなみに宇宙飛行士が国際宇宙ステーション内で口にする宇宙食は、これらの栄養素をしっかりと摂取できるように管理されて作られています。

これから解明! 宇宙にある健康長寿のヒント

私はJAXAのフライトサージャン(航空宇宙医学専門医)として、リハビリ医学の専門性を活かした宇宙飛行士の健康管理に取り組んでいますが、宇宙医学の見地から得られた成果を地上での寝たきり予防に活かす視点は大変重要だと感じています

。宇宙飛行士は比較的年齢が若く、国際宇宙ステーションに滞在中も作業が多いことから、例えば廃用症候群の一部である「関節拘縮」(関節が硬くなり動かしにくくなること)を認めることはあまりありません。ただ、一部の宇宙飛行士の実感として、体幹の筋肉が硬くなった感じがあるようです。

このように宇宙飛行士の一言一句を拾える健康管理は、フライトサージャンにとっての大事な任務です。そして、その一言一句の中に宇宙飛行士の健康管理をよりよくするヒントが隠れているはずです。宇宙医学の見地から得られる積み上がった成果が、ひいては地上に住む多くの人類の健康長寿につながっていくと考えています。

速水 聰
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)主任医長
リハビリテーション科専門医。リハビリ専門クリニック等での勤務を経て、現在はJAXAで宇宙飛行士のリハビリ等の健康管理を担う。