「北朝鮮の漁船を救助中に起きた」と人道面を強調

間違っているのは韓国だ。国際社会も理解しつつあると思う。だが問題がこじれる前に政治的に解決しなければならない。

このままでは防衛省が言うように北朝鮮を喜ばすだけである。韓国は「北朝鮮の漁船を救助中に起きた」と人道面を強調してやまない。もっと言えば、事実関係で日本と勝負できないから、動画を公開することによって人道面から日本を非難しようと、国際社会に訴え出たわけだ。

韓国が異常になっているときだけに日本は冷静に対応しなければならない。韓国の真の狙いは何か。常にそれを念頭に置いて対応したい。来月2月22日は島根県が定めた「竹島(韓国名・独島)の日」だ。さらに3月1日は韓国の「3.1独立運動」から100年の節目を迎える。支持率が落ちている文在寅(ムン・ジェイン)政権にとって大きな正念場である。これまでの政権のように文大統領は、日本を非難することによって韓国世論の支持を獲得しようとしている。

安倍首相はどこまで分かっているのか

それに日本が乗ってはならない。心配なのは安倍首相の心の内である。動画公開の判断は正しかったが、安倍首相は多少気が短く、興奮しやすい欠点がある。野党に攻撃されたときの国会での答弁を見ていればそれはよく分かるだろう。

これからは非公式の水面下の交渉を重視し、韓国から謝罪を引き出すことが求められる。それには文政権もしくは文大統領の弱点を突くしかない。いまこそ「インテリジェンス(諜報活動)」で集めた情報を活用するときだ。

さもないと北朝鮮の核・ミサイルの脅威も解消できないだろう。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンイル)朝鮮労働党委員長は1月8日に中国を訪問し、習近平(シー・ジンピン)国家主席と面会するなど、着々と対米戦略を練っている。このままでは日本が取り残されてしまう。

いまのまま“ビデオの公開試合”を続けていては、「目には目を、歯には歯を」の負の連鎖にはまるだけである。照射事件を逆手にとって米国をうまく取り込み、韓国をなだめすかし、中国と北朝鮮に対抗すべきである。いまが日本の外交力が試されるときだ。

果たしてそこを安倍首相は分かっているのだろうか。

今年は12年に1度の「亥年選挙」にあたる。春には第19回統一地方選、夏には第25回参院選が行われる。安倍首相は12年前の参院選大敗・退陣を強く意識し、両選挙に全力投球しようとしていると漏れ聞く。しかし首相自身が自らの支持率ばかりを気にしているとしたら実に情けない。