いわゆる「徴用工」裁判で、韓国最高裁(大法院)が立て続けに日本企業への賠償命令を発している。1965年の日韓請求権協定で消滅したはずの個人請求権を認めるのはおかしいとして、日本の政財界などから韓国非難の声が上がっている。この異常事態をどう収拾したらいいのか。橋下徹氏の提言を紹介する。以下はプレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(12月4日配信)の抜粋記事だ。

原因を探り、対応を考えよう。重要なのは「フェア」の概念だ!

韓国大法院(最高裁)は、10月30日に引き続き、11月29日にも、戦時中日本企業で強制的に労働させられたことを理由に、韓国人元労働者が日本企業を訴えた件で、労働者の主張を認め、日本企業(今回は三菱重工)に賠償命令を下した。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/BCFC)

日韓関係は極度に冷え込んでいる。そして日本の政治家からは韓国に対抗措置をとるべきだ! という声も上がりはじめている。

しかし、お互いに非難合戦をすることは、無責任な政治家や自称インテリたちに任せておけばいい。責任ある者は、今回の件をどう収めていくか、その解決方法を探ることが使命だ。まさに問題解決能力が試される。

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事態を収めるための協議というなら、お互いに揉めている原因を探って、それへの対応策を考えるという、問題解決の基本姿勢を忘れてはならない。

そして相手の言い分にもそれなりの理屈があるはずなので、相手の言い分を最初から跳ねのけるのではなく、しっかりとその言い分を聞き、その言い分から揉めている原因を見つけ出していく姿勢が重要だ。

その際に、最も重要なポイントは、「フェア(公平)」の思考を持つこと。

国や民族などが異なれば、当然、基盤となる歴史や文化も違う。そうであれば、それぞれの国民の価値観が異なるのは当たり前のことだ。ここでお互いの価値観についてどちらが正しいかを論じても仕方がない。価値観とは論理的に追求して得るものというよりも、自分はどのような立場に立つかだけの話であり、そもそも正しい・間違いの評価を受けるものではないからだ。しかし「フェア(公平)」という概念は、どんな価値観を有している者であっても、必ず賛同するものなので、異なる価値観を持ち、異なる立場に立つ者であればあるほど、「フェア」という物差しで考える思考が必要かつ重要になってくる。

そしてこの「フェア」という概念・物差しは、それほど難しいものではない。「普段自分たちが主張している理屈は、相手にもしっかりと適用してあげましょうね」「普段自分たちがやっている態度振る舞いを、相手がやったからといって非難するのはやめましょうね」「自分たちでもできないことを相手に求めるのはやめましょうね」という、その程度のことだ。

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朝日新聞や毎日新聞は、沖縄知事選挙で普天間基地の辺野古移設に反対する玉城デニーさんが勝利した際、「これが沖縄の民意だ! 辺野古移設を思いとどまれ!」と叫んで選挙結果を強調した。にもかかわらず、僕が大阪都構想を掲げて選挙で勝利すると「選挙結果が全てではない。反対意見があることもしっかりと考慮せよ!」と叫んで選挙結果を軽視する。これは「フェア」じゃない。

特に朝日新聞は、民意の捉え方について「フェア」じゃない。憲法改正の国民投票は、そのときどきの風に左右されてポピュリズムに陥る危険性があるから反対だという。そのくせ、沖縄県知事選挙の投票結果は絶対視する。アンフェアだ。

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韓国大法院判決を巡る日韓関係の問題を収める問題解決においては、この「フェア」の考え方がキーになる。