「俳優として七色以上に光りたい」
「親の七光りですか? 僕、虹郎っていうくらいなので俳優として七色以上に光りたいです」
俳優・村上淳を父に、歌手・UAを母に持つ俳優・村上虹郎は、お決まりの2世という言葉にも明るくこう返す。
気鋭の映画監督やクリエイターに「今最も仕事をしてみたい俳優の一人」と注目される村上は、チャーミングな中にもつやと色気があり、時に狂気をはらむ生々しい演技が高く評価されている。17歳でデビューしてから4年間に14本もの映画に出演。映画・舞台・ドラマ・CM・雑誌など表現の世界において仕事が途切れることはない。
11月25日放送のドキュメンタリー番組「情熱大陸」では、かつて自分が芸能界に嫌悪感を抱いていたことや、今“親の七光り”と言われることへの率直な思いを語った。
虹郎が醸し出す独特のオーラは親譲りのものだけではない。どんな場所でも物おじする様子がなく、唯一無二の存在感を放つ。主演4作目となる映画『銃』の舞台挨拶では、共演者にこわもてな風貌やファッションを茶化されても飄々と笑顔でかわし、今夏のドラマ『この世界の片隅に』撮影現場では、共演者にかわいがられる天性の人懐こさを見せていた。
【共演する俳優・松坂桃李】「今、ドラマで虹郎と一緒って言ったら、柳楽優弥が『どう、アイツ?』ってすごい気にかけてたよ(笑)」
人から嫌われるのは“ヘイト”しているから
5月には世界的に知られる演出家サイモン・ゴドウィンの舞台も控えており、スケジュールはパンパンだ。だが、忙しい合間を縫って村上はこの日、殺陣の稽古を受けていた。
指導を仰いでいるのは、この世界の第一人者で殺陣師の渥美博。徹底した指導で、2時間以上剣を振り続ける。
【渥美博】「若くして顔つきや所作に色気がある。そういうの見てると、こういう役をやらせてみたいとか、使いたいなと思わせる場面がたくさんある」
稽古が終わった後、何か言いたげな虹郎にカメラを向けてみると、意外な言葉が飛び出した。
【虹郎】「情熱大陸が放送されたら、きっとこいつ生意気だなって言われるんですよ。もうちょっと偉くなってから偉そうにしろとか……。でも、人から嫌われるってことは、もしかして僕が先にヘイト(憎しみ)を発しているのかもしれない。ヘイトにはヘイトが返ってくるから。でもたまに(僕の)LOVEも相手からはヘイトで返ってくるんですよね。あれ、困るんですよ(笑)」
普段から気取らず、飾らず、感じたままを口にする。それゆえ、素の自分は時に周りを誤解させ、反感を買うと感じることがあるようだ。だからこそ、別人を演じることに没頭したのかもしれない。