それでも、日本は朝鮮側政府の要望により、大韓帝国を合法的に併合し、合法的に統治をして、その近代化を支援しました。こうした日本の誠意が、現在の韓国の大法院の判決にも見られるように「不法」と罵られ、その「不法行為」に対する「慰謝料」を請求されることになるとは、当時の朝鮮統治に関わった日本人も想像できなかったでしょう。

日韓基本条約では合法性論議を棚上げに

1965年、日韓基本条約が結ばれ、日本は韓国政府に総額8億ドル(無償3億ドル、政府借款2億ドル、民間借款3億ドル)を供与しました。これは当時の韓国の国家予算の2倍以上の額で、この巨額の支援金を使い、韓国は「漢江の奇跡」といわれる経済復興を遂げました。

一方で、締結に向けた交渉の中で、韓国側の担当者は、日韓併合条約を含む旧大韓帝国と日本間の条約は「民族の総意」に反して結ばれたために当時にさかのぼって無効であり、そのことを基本条約に明記するよう主張(*4)。国際法上も正当な国家間の条約であったという立場に立つ日本政府は、これに強く反発しました。最終的には「もはや無効であることが確認される」という玉虫色の文言で、併合をめぐる解釈の違いを棚上げにして基本条約を締結したのです。

その後国際的に活躍する韓国企業も育つなか、韓国国民の間には、自分たちは優秀であるというエリート意識が芽生えはじめます。しかし、ふと自国の歴史を振り返れば、内輪の権力争いや国論の分裂に引き裂かれ、結局は他国頼みでしか問題を解決できなかったつらい現実があるばかりです。近代化への道も自分で切り開けず、日本の統治を自分たちの手で排除できたわけでもなく、朝鮮戦争でもアメリカ頼りでした。

日本の支援により「漢江の奇跡」のような経済発展を遂げたといった事実は、韓国人にとっては目を背けたいことです。こうした状況のもとで、今日の徴用工裁判判決のような現象が必然的に生じているのです。

(*1)韓国大法院ウェブサイトの判例『日帝強制動員被害者の日本企業を相手にした損害賠償請求事件』(2018.10.30.)
http://www.scourt.go.kr/portal/news/NewsViewAction.work?pageIndex=1&searchWord=&searchOption=&seqnum=6391&gubun=4&type=0
(*2)日本弁護士連合会『三菱重工事件釜山高等法院判決(差戻審) 仮訳』(2013)
https://www.nichibenren.or.jp/activity/international/nikkan_shiryo/korea_shiryo.html?revision=0&mode=0
(*3)国会図書館デジタルコレクション 室田義文翁物語編纂委員編『室田義文翁譚』P274(1939)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1217103
(*4)藤井賢二『第1次日韓会談における「旧条約無効問題」について』東洋史訪 15 P76~P84(2009)
http://hdl.handle.net/10132/2674

宇山卓栄(うやま・たくえい)
著作家
1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。おもな著書に、『世界一おもしろい世界史の授業』(KADOKAWA)、『経済を読み解くための宗教史』(KADOKAWA)、『世界史は99%、経済でつくられる』(育鵬社)、『「民族」で読み解く世界史』(日本実業出版社)などがある。
(写真=近現代PL/アフロ)
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