※本稿は、水代優『スモール・スタート あえて小さく始めよう』(KADOKAWA)の第5章「会社員のうちに『ライフシフトする』考え方」を再編集したものです。
キャリアチェンジは50歳でするのがいい
ちまたでは「ライフシフト」がさかんに語られています。僕も30代で会社を辞めて独立しましたが、とはいえ、みんながみんな30代とかでライフシフトをする必要はないと思っています。自分の会社員時代の経験や、いまさまざまなプロジェクトを通して見聞きする組織の様子から考えると、日本で会社に勤めている人なら、シフトするなら50歳頃が適切ではないかなと感じています。
その理由は、日本の会社の仕組みです。
新卒一括採用で入社した同期はみんな、同じような経験をしながら、同じように昇進していきます。でもそれは、45歳くらいまでの話です。50歳くらいになると、役員になっている人、役員候補になっている人もいれば、そうではない人もいます。きっとそれまでも小さな差は付いていたのだけれど、それがはっきり誰の目にも見えてわかるようになるのが、45歳くらいだと思うのです。
そこで「あ、自分は役員にはなれそうにない」と気が付いたとき、多くの人はキャリアチェンジ、ライフシフトを真剣に考えるのではないでしょうか。
45歳で気が付いて、5年間準備をして、50歳で実行。悪くないプランだと思います。
80歳まで同じ会社で働き続けられる可能性は低い
「50代は会社員人生で最高に給料をもらえる時期だから、50歳で辞めるなんて、それまでの20年以上の投資を回収できずに損だ」と考える人もいるかもしれませんが、その刈り取り期間は10年ほどしか続きません。定年まではあっという間です。
80歳までその会社で働き続けられる可能性は、かなり低いはずです。だったら、50歳のタイミングで、今勤めている会社にこだわらずに80歳まで働ける場に自分を置くのです。
45歳で「まだこの会社で上に行けるかも」と期待が持てていて、そちらに全力投球する人は、シフトのタイミングを逸してしまうかもしれません。
それに「定年後」だと、少し遅い気がします。定年しているということは、それまでの人間関係もリセットされているということです。そこでいきなり起業はちょっと危険です。だから、定年までと定年後をきっちり切り分けるのではなく、45歳くらいから少しずつ準備をして、満を持して50歳で会社を辞めるのです。60歳ではなくて50歳なのは、「50代と60代では気力や体力がまったく異なる」とよく聞くからでもあります。