もしも会社員経験がない人や浅い人が、プロジェクトで企業とコラボをしようとしたら、「根回しなんてバカらしい」「稟議なんてすぐに通してくれ」などと思ってしまうかもしれません。

でも、会社員経験があれば、相手の立場、相手の気持ち、相手のジャスティスがわかります。わかれば配慮できるので、相手にしてみれば「あいつは会社の外の人間なのに、会社のことをよくわかっている奴」という、頼れる存在になります。

僕は、日本はひとつの“会社”だと考えています。みんな、いろいろな企業で働いているし、企業を経営している人もいるし、組織には属さないで働いている人もいます。でも、そこに共通するルールは、あらゆる企業の最大公約数的なルールです。

そのルールで運営されている日本という会社のなかで、僕はできるなら“出世”したいなと思っています。ライバルは、日本全国にいる、同じようなことを考えている人たちです。

でも、出世するにも条件があります。自分より若い世代に嫌われてまでは出世したくないと思っています。

出世しようとすると、上ばかり見てしまって、気付いたら足元がぬかるんでいたなんてことがないように、足場をしっかり固めて、上を狙っていきたいです。

だから、僕は日本という会社に共通するルールは守りたいし、守ったほうがいいと思うし、知っていないと損をすると思います。そのルールを体得するには、会社という研修機能を備えた組織で修業をするのが手っ取り早いと思っています。

出世競争ほど費用対効果の悪いものはない

僕は、組織内での出世競争ほど費用対効果の悪いものはないと思っています。

「さっきと話が違うじゃないか」と思われるかもしれませんが、ここでいう出世競争は日本というひとつの“会社”での出世競争ではなく、現実の企業・組織内における出世競争です。

会社には社長は一人しかいません。その一人が10年間社長を務めるとすると、ざっくり言って、その社長の同期とその10年後輩までの間からは、ほかの社長は誕生しないということです。同期が10人くらいいるなら10年分の100人、同期100人なら1000人のうち、社長になれるのはたったの一人。その他の99人、あるいは999人はその出世競争の敗者になります。敗者になるほうが圧倒的に確率の高いゲームに人生を注ぎ込むのは、ちょっと違うんじゃないか。それが、費用対効果が悪いという言葉の意味するところです。