問題点の分析・改善がなければ補助金をつぎ込んでも衰退するだけ

そんな本庶さんが、今、しきりに研究環境の改善を訴えている。特に研究費、その中でも基礎研究費の予算をもっと増額して欲しいと訴えている。先日は、柴山昌彦文部科学大臣にも直訴した。本庶さんは、口で言うだけではなく、自身が受け取るノーベル賞の賞金も大学の基金に寄付するらしい。さらに企業の協力なども得ながら、その基金を1000億円の規模にしていく意欲も示されている。

この社会的影響力はすさまじい。ノーベル賞受賞者が言っているのだから世間も同調する。今のメディアの論調も、研究予算の拡大に賛成の傾向だ。ちょうど、昨今日本の大学の競争力が落ちていること、特に引用論文数が世界の大学の中でも芳しくない状況であることが話題になっていたことから、そのことも合わせて「もっと大学に金をつぎ込め!」という声が勢いを増している。

しかし、僕は、今の日本の大学の状況のまま、大学の予算を単純に増額することには反対だ。

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補助金の入れ方、効果には大きく分けて2つある。

一つは、弱っているところを助けるために入れる補助金。こちらはイメージしやすい。そしてもう一つは、競争力のあるところに、さらに補助金を入れて、競争力を強化していく補助金。今の日本社会に必要とされている補助金の在り方、特に大学に入れる補助金は、後者であるべきなんだよ。

ところが、大学の予算増額を声高に叫んでいる一般社団法人国立大学協会(会長は山極寿一京大総長)が例年作成してる補助金要望の資料は、ほんとお粗末極まりない。

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この資料を見る限り、僕が知事・市長時代に散々経験した、ダメな事業者の予算要望の典型例だ。予算さえ増額すれば、大学の競争力が強化されると信じ込んでいる。普段は、大学こそが国家を支える土台だとか、大学こそが日本の未来を引っ張る牽引車だとか、威勢のイイ、カッコいいことを言っているのに、予算要望のときには、他の事業者や役所の担当部局と同じく、大学は救済されるべき弱者だと言わんばかりだ。